PoWで示される仮想通貨の価値をマイニングによる電力のみとするならば現状はバブルと言えませんか?そうなのでしょうか。金の採掘コストが一定という共通認識はありますが、マイニングの効率=電力格差は大きいと思います。いかがですか? https://t.co/dsXxYRolXr
— ton (@ton960) March 23, 2018
上記記事によると、「PoWのコインだけが貨幣になりえ」「PoWに消費された電気代がコインの価値の源泉」だとのことです。
いつもは「頭のいい人向けに端折って言っている」ことを、かみ砕いてくださっている記事なのですが、私は納得できませんでした。
まず、要約をします。
上記記事の方はおっしゃいます
暗号通貨の効用は大きく2つ。1つめは、実用性に対する効用。2つめは、「富の量を示すことができる」こと。
さらに氏は、金を例にとり、その重要な性質を二つ示します。一つは他の貴金属から作りだすことができないこと、もう一つは、作り出す(掘り出す)のにコストがかかり、そのコストはほぼ誰がやっても似たようなものであることが共有されていること、だそうです。二つ目については、どこかの会社が意図的に供給やコストをコントロールしているわけではない、とおっしゃいます。
この二つが常識(通念でしょうか?)とされているため、ゴールドには富の量を示す効用があるとしています。
ゴールドの入手において、ズルができず、誰もが一定のコストを強要されるという1点の理由において、富を誇示する道具として使うことができた、とのこと。
PoWのコインは、一切の実用性がなく、掘り出すこと(マイニング)にコストがかかる、ということをもって、「富の量を示す」という非常に特殊な効用・需要を発生させている。価格は理論上は1点で、長期的には、採掘の限界費用(マイニングコスト)と一定します。つまり新規コインの発行は時価で行われる。
PoWとPoSのまとめをして、論は終わりとなります。
引用はここまでです。
ふむ、確かにゴールドの部分は確かにそうです。
全体として、本当にそうか、軽く考えてみた結果が冒頭のTwitterです。
ここではもう一度考えてみます。
まず、
マイニングによる電気代がコインの価値の源泉と考えるのはおかしいように思うのです。私は以前から、「あなたの仮想通貨の値打ちが上がる方法」にありますように、仮想通貨のファンダメンタル構成要素は、技術・マーケティング・コミュニティの三要素だと考えています。
例えばBTC、価値の源泉がマイニングコストのみでしょうか?
フォーセットなどを利用して宣伝をし、利用者を増やし、使ってくれるコミュニティを広げたのではないでしょうか?
技術分野ではブロックチェーンの説明会などもあったのかもしれません。有志による勉強会は、今、日本でも行われていますよね?
電気代はコインの価値(原価?)の一部だとは思いますが、価値の源泉そのものではないと考えます。さらに言えば、どれだけ原価がかかろうとも、そのコインに対する価値が認められなければ原価が割れる、マイニングコストの総和すら、BTCの時価が下回るのです。
世の中の全員が「仮想通貨なんて電子ゴミだよね、やっぱり現金だよ」「ビックカメラもBTC払いから撤退したよ」そうなった世界を想像してみてください。
BTCをたくさん持っている人は電気代をたくさん支払ったんだろうな、と思うことはできますが、多くの富を持っているとは見られないはずです。
BTCが生まれて間もないころ、10,000BTC持っていたらどう思われたでしょうか?
きっと、ITの実験をしているんだろうな、と思われるでしょう。
今、10,000BTC持っていたらどう思われるでしょうか?
きっと、お金持ちだとみなされるでしょう。
つまりこの例では顕著に、PoWであろうがなかろうが、コインの価値はコミュニティの意識によって変わることがお分かりいただけると思います。
マイニングによる電気代は、コインの原価として価値を形成する一つの要素にはなり得るが、それ自体がコインの価値ではないのです。
現在のBTCの価格は、ファンダメンタルの価値をそのまま表したものではないかもしれませんが、今までの電気代の総和ではないはずです。それを超えたコミュニティ形成コストやマーケティング費用、BTCの仕組みを維持する費用がかかっているのです。
また、
>作り出す(掘り出す)のにコストがかかり、
>そのコストはほぼ誰がやっても似たようなものである
>
現状、中国勢がマイニングで大活躍しているのはご承知の通りだと思います。
彼らはASICと安価な電気代を利用し、マイニング事業で荒稼ぎをしていました。(2018年春現在、どの程度の収益性があるかは知りません)
中国でマイニングを行うコストと、日本でマイニングを行うコストが似たようなものだとお思いですか?伝聞の情報で恐縮ですがASICは業者とのコネクションによって入手の難易度が違うそうです。それが真実ならば、コストはだれがやっても似たようなものとは言えません。中国生まれで生活コストや安い電気代の恩恵を受けられるAさんと、日本生まれ生活コストや電気代が高いBさんでは、マイニングにかかるコストは違うのです。
さらに
>富の量を示す効用がある
件についてですが、問題があると考えます。
前提となる
・作り出す方法は一つしかない
・採掘コストは一定
二つ目が上記で崩れたのであれば、「富の量を示す効用がある」という主張も崩れます。しかし、この主張にはまだ問題があるのです。
貨幣には3つの役割があるとされています。
1)ニュメレール、価値の尺度
2)交換手段
3)価値貯蔵手段
大根を貨幣とした場合を例にとり、考えましょう。
大根は腐りますね?一本一本違っており、出来がいいものもあれば、悪いものもあります。このシャーペンは大根一本分です、と言っても成立しない。一方で100JPYや100BTCです、という値付けは成立する。1)はそういう、物差しとしての役割です。物差しの目盛りが(あまり)動かないことが大切なのですね。
2)は他の物を買うときに交換物として成り立つか?という話です。ビックカメラで家電を大根では買えませんがBTCで購入することはできます。
3)がおそらくここで、氏のいうところの「富の量を示す効用」なのだと思います。一般には、価値貯蔵手段と言います。労働の対価として大根を受け取った、それは良いが一週間後腐ってしまった。これでは価値を貯蔵できていません。50万円給料で受け取れば、それは一週間後も50万円です。さらに、月給50万円であれば、年齢や職業、居住地域にもよりますが、それ相応の扱いを受けます。富の量を示せているといえます。
保有する金の量が、そのコストや権威を化体させたものであり
ヤップ島の石のお金が、そのコストや権威を化体させたものであるのであれば、「富の量を示す」=価値貯蔵手段となります。
では、BTCは価値を貯蔵しているのか?
今日100万円であったBTCが明日には80万円になるかもしれない。そんな状況が今の仮想通貨の市況です。
BTCを100万円で買うということは、100万円の価値を貯蔵したことになりません。それは、今後の価格向上を企図した投資です。
以上、
マイニングによる電気代それ自体がコインの価値ではない事を示し
マイニングコストは、人によって違うことを示しました。
最後にPoWの仮想通貨代表格であるBTCに価値貯蔵機能が今はない事を例示し、PoWコインだからと言って、富の量を示す効用があるとは言えないことを示しました。
では、仮想通貨は通貨になり得ないのか?
私はそう思いません。ペッグ通貨のようなstableCoinは貨幣としての三つの役割を果たすでしょう。それに三つの役割を果たさずとも、一般通念上、交換手段として成り立っていれば通貨と言っていませんか?であれば、多くのオルトコインがいろいろなお店で仮想通貨決済手段として採用されています。今後の日本ではオリンピックがあり、観光産業の育成が国策となっていますので、外国人観光客がレート(TTBとTTSの差です)を嫌がって仮想通貨での決済をする事が日常となるかもしれません。その時に重要なのは、どのコインを持ちどのコインが受けられているかというコミュニティの部分であり、決して「PoWかPoSか」ではないと思うのです。
>反論などありましたら、ツイッターなどでどうぞ。
とありましたのでTwitterを送ったのですが、反応がありませんでした。
あまりにもおバカなツイートで相手にしてもらえなかったのかもしれませんね。
それにしても、記事の「本物の貨幣」とは何だったのかがいまだにわかりません。
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