クリプトエコノミクスについて、とりあえずこれで一段落にしようかと思います。
cryptoeconomics: crypto-backed mechanism design · m0t0k1ch1st0ry
こちらで引用されてるVladさんの目線、おそらくは暗号学者の目線でとらえた暗号経済学ですね、違う目線から考えるのも重要ですよ、と指摘いただきました。
今回はそちらの話を書きたいと思います。
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今までの経緯は以下の通りです。
さて、件のVladさんのご意見ですが。
cryptoeconomics is economics for cryptographers, not cryptography for economists.
— Vlad Zamfir (@VladZamfir) January 25, 2015
「暗号経済学は、暗号学者のための経済学なんだ。経済学者のための暗号学じゃぁない。」
冒頭の記事の著者の方は
自分が難しいなと感じるのは、cryptographer 視点で解釈するか、mechanism designer 視点で解釈するか です。
とされています。
私の解釈では、Vladさんのツイートは、手段と目的をはき違えてはいけないという事だと思うのです。
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私は先日の記事で
なので、経済学は、社会の法則を見つけるゲーム理論的な考え方であり帰納法です。
一方で、暗号経済学は、社会の法則をデザインするメカニズムデザイン的な考え方であり、演繹法的アプローチです。
と書きました。
そしてさらに
クリプト部分は手段であって他のものでも良いのでは?と書きました。
なので、私の考えでは、暗号技術でなくともうまく社会をデザインできる手段があればそちらでもいいなと思うのです。人工経済学(artificialEconomics)とでもします。
人工経済学はsomethingBackedな世界で、そのsomethingの一つがcryptoです。
人工経済学は暗号経済学を包括します。
現状で、暗号技術以外に、有用で枯れた技術があるかというと代案がないので、人工経済学≒(ニアリーイーコール)暗号経済学です。
と書きました。
これがやはり、私の考えの大本(おおもと)になります。
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Vladさんのツイートを繰り返します。
「暗号経済学は、暗号学者のための経済学なんだ。経済学者のための暗号学じゃぁない。」
ここで大事なことは、暗号経済学は経済学なんだ、というところではないかと思うのです。暗号学じゃなくて、経済学なんだよ、と。
私の理解では、
暗号経済学における暗号学と経済学は、手段と目的のような関係にあります。
(はっきり手段と目的と言えないのは、経済学がどうしても世の中を帰納要約するアプローチになっているからです。
暗号経済学は世の中をデザインするので、アプローチが違うのです。)
暗号経済学で、一つのものの見方をとらえ、その価値観で上手く回る社会をデザインするのに、現状暗号学がベストチョイスなのです。
これは暗号経済学がデザインする学問であることを端的に表しているように思えます。
冒頭の引用記事の方はこうおっしゃいます。
また、前回の記事で、
トークンという概念も、cryptoeconomics を考える材料の 1 つに過ぎません。
とは書きましたが、cryptoeconomics を考える上で Blockchain という概念すらも必須ではないということに注意してください。
その通りでして、トークンは価値の移転媒介物にすぎず、むしろトークンの移動を社会の構成員が意識しないデザインの方がスマートなのかもしれません。
それだと、内部的にはやはりトークンがあり、ブロックチェーンがあるのではないか?とご指摘を受けるかもしれません。
しかしそこすら、暗号経済学が、新しい人工的な社会の仕組みをデザインする学問である、と捉えるとご納得いただけませんでしょうか?
その社会は、一つの家族でお子さんが父の日のプレゼントに肩たたき権(大概は「券」ですが、今回は「価値」の意味を重視して「権」とします)をプレゼントし、父親が使う、というものも含まれます。
ここに暗号学は利用されていませんが、私の暗号経済学の理解が「人工経済学の一部分であり、今現在は「人工経済学≒暗号経済学」である」というものです。
だから、トークンもBCも、暗号技術すらない社会であっても私の中では矛盾しません。
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では、私が暗号学の研究者であればどのようにとらえるか。
暗号技術という基礎分野の、利用先が増えたと捉えます。
その利用先が新しい社会の設計であれば、正に、暗号経済学は暗号学者に与えられた経済学だといえるのではないでしょうか?
先述の記事から引用します。
Cryptoeconomics is not the application of macroeconomic and microeconomic theory to cryptocurrency or token market
「暗号経済学は、仮想通貨や仮想通貨市場へのマクロ・ミクロ経済学の応用ではありません」
確かにおっしゃる通り。
では
Cryptoeconomics is the application of cryptography to basis of artificial society.
とは言えませんでしょうか?
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私は 経済学を「最も効率的な資源の配分を考える学問」だと認識しています。
なので、暗号学者は自分の技術を社会のデザインに利用し、そのデザインにおいて経済学が必要となるという関係にあります。
経済学者は、その学問の対象となる社会が暗号経済学で作られた社会を含むはずなので、その人工的にデザインされた社会が認知されるにつれて経済学の拡張を迫られると思われます。
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まとめます。
私の解釈だと、暗号学者(cryptographer)からすると暗号経済学は、自分の技術の応用分野であり、そこには経済学的な視点が必要になる。
つまり、「cryptographer 視点で解釈するか、mechanism designer 視点で解釈するか」というよりも、最終的にはデザインが目的なのだからmechanism designer 視点に収束する。
比較するのであれば、economist視点か?cryptographer視点か?である。
と、私は解釈します。
帰納と演繹が怪しい方はこちらをご覧ください。
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