かんがえる、かがんでいる人

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ICOのトリレンマの話

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ICOを巡る「コンプライアンスのトリレンマ」、ICOのポテンシャルに大きな制約=カナダの大学が調査 | Cointelegraph

こちらが興味深かったので、書きます。

 

まずトリレンマなんですがジレンマの三つバージョンです。
ブロックチェーンのトリレンマが有名です。

ブロックチェーンのトリレンマ問題に「汎用性の難しさ」を加えたスケーラビリティへの考え方について | CoinChoice
ではKyberNetwork(カイバーネットワーク)のCEOであるLoi luu(ロイ・ルー)さんが
ShardingやPlasmaのボトルネックを踏まえた上で、Genericity(汎用性)を加えて「Scalability・Decentralization・Security・Genericity」の4つのクオドリレンマとしています。
引用しますと

Plasmaが異なるPlasamチェーン同士のコミュニケーションが困難であることや、異なるShard同士のコミュニケーションが困難であることを前提にして、汎用性を不可することも困難であるという問題提起だと言えます。

だそうです。

相互運用性(interoperability)とは何かという話 で書いた相互運用性に難があるということですね。


トリレンマでもクオドリレンマでもいいのですが、全ての要素を満たすのが不可能という事です。

 

ICOのトリレンマでは
オファリングにおけるコンプライアンスを守り」、「分散の効いた投資家プールにアクセスし」、「費用対効果の高い手法を用いる」

としています。

 

よくわからないので私の表現で言い換えます。
1)資金調達における法令順守
2)公募
3)資金調達における効率性の確保


A);1)2)を満たせば、資金調達手段として非効率になります。
B);2)3)を満たせば、広く早く荒く資金調達をするので法令順守がおろそかになります。
C);3)1)を満たせば、VCや適格投資家など知識も経験もお金もある人から集中的に資金調達を行います。結果、ICOの一つの利点であるコミュニティの形成は放棄され、COIN実物の所有者が偏在することになります。価格操作性に懸念が残ります。

 

言い換えます。

A)ではFINTECHにより効率化された資金調達手段としてのICOの性質を捨てることになる。ICO以外の資金調達手段でもよいのでは?
B)ではICO自体が違法とされる懸念があり、安心できるプロジェクトとは言えない。危険。論外。
C)では資金調達のみに主眼が置かれている。ICO以外の資金調達手段でもよいのでは?

 

私の考えは、以下のようにまとめられそうです。
法令順守を破るBは論外である。
しかし、法令順守を満たそうとするとICOで資金調達をする意味を考え直さざるを得なくなる。
つまりはICOをどのように位置づけるかが問題のようだ。


では、ICOの位置づけはどのようなものになるでしょうか?
ここで、ICOプロジェクトの性質を分けてしまいます。
A)プロジェクトの内容が具体的でコミュニティの存在が不可欠な内容
C)プロジェクトの内容が抽象的で専門家でないと評価し得ない内容

 

A)は例えば、ALISのようなものだとしてください。
C)は例えば、スケーラビリティを既存のプロジェクトに対しても向上させられるような汎用的な施策を研究するものだとしてください。

 

いかがでしょう。

 

A)であればコミュニティが無ければどうにもなりません。一つも記事がないALISに価値はありませんよね?なので「コミュニティの成立が急務であり、皆が当事者としてプロジェクトに参加する仕組みづくりこそが大事なプロジェクト」という事になります。プロジェクトの中身がわかりやすいのです。だから多数の参加者を募りたい。なるべく多くの人に当事者となってもらうべく、少しずつ多人数に投資してもらうのが多分賢い。


C)であれば優秀な開発者の確保が急務であり、投資家の分散は妥協できます。つまりは「審美眼がある人にプロジェクトを評価してもらって、お金が早急に欲しいプロジェクト」という事になります。
専門性が高いゆえに分散するほどの投資家が集まらない可能性が高いのですね。なので分かってくれる理解できるだけの知見がある人が現れたら、その人からなるべく多くの資金調達をするのが多分賢い。

 

なるほど、と。
じゃぁこれでよいのか?

 

いえいえ、問題は残ります。特にA)における効率性の欠如はそれなりに致命的ですしC)においてもCOINの偏在化における価格操作性を妥協することはできても、良しとすることはできないでしょう。

 

「なんだか話がぐるぐる回ってるね」
その通りです。

 

なので、記事で

金融規制当局へのコンプライアンスにかかるコストが「跳ね上がる」

 とされている点がテンプレの導入など、何らかの形で解決すればA)のプロジェクトは今後もあり得るように思えます。
C)においては、プロジェクトのかじ取りに対する投資家の影響力と価格操作性のバランスです。
企業統治ならぬプロジェクト統治に関しては投資家の口出しは良いとも悪いとも言える問題ですし、投資家が売り抜けたい高くCOINを売りたいと思うのであれば市場が混乱するような投げ売りはしないはずです。

 

そう考えていくと、C)における問題点は人の心情に依るものであり、A)の問題点は仕組みにより解決できそうだと思います。(C)の価格操作も法律で規制できそうですが、国際的な一致が必要なのと規制規制というのもアレなので、相対的な話ですがズバッと割り切った、とご理解ください)

 

効率的な仕組みが今後確保されるのであればA)のプロジェクトは今後もICOにおける対象プロジェクトになり得ます。
記事では

「マーベリックICO」、「プライベートICO」、「ハイブリッドICO」、そしてICO自体を行わない

という選択肢が提示されています。
コンプライアンス無視の「マーベリックICO」は論外としても「プライベートICO」は私の考えでいうところのC)になります。


私が重要で注目していただきたいと思う点は、最後です。
すなわち、ICO自体を行わない。他の資金調達を考えるというプロジュクトも増えてくるだろうという点です。

米SECが「水面下」で仮想通貨規制を行なっている可能性を米弁護士が示唆
私募であってもSECの規制に引っかかる可能性がある以上、ICO自体に相当なリスクがある状況です。

 

発展途上で使われないから仕組みも規制も成立しない、環境が整っていないから発展しないというジレンマというのが現状のICOではないでしょうか?

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