スコアリングシステムというのは数値化をし点数をつけてランク付けをする、格付け事業の事です。
過去、こちらではmintosさんという外国のマイクロクレジットへの投資方法をメモしました。
その中で
loanOriginatorは貸出案件作成者です。彼らが借り手を供給してくれます。
Ratingでmintosさんが格付けした業者を選択できます。私は「B+」まで可としましたが、もう少し絞ってもいいかもしれません。
格付けという時点で主観が入っています。鵜呑みにするのは禁物ですが、私は外国の案件作成者事情がわかりませんので、まずは頼ってみます。
と書きました。
また、
こちらでは、Facebookさんが発行を公表したlibraという暗号資産について「中途半端と言われているが、この仕様が合理的だとすれば何を考えているのか?」という擁護の観点から考えてみました。
大前提としてFacebookさん(と、その仲間たち)が、Jスコアや芝麻信用のような信用スコアサービスを目的としているのであれば、割とすっきりとまとまりました。
これらを通じて、改めて、他人の物差しを使うことについて考えます。
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数字には魔力があるようです。
客観性が非常に高いからです。
だから、人は、レビューの格付けを気にしたり、年俸やプレゼントの価格を気にするようです。大学は偏差値を気にするでしょうし、仕事も序数的であったとしても序列という数字を気にするのだと思います。
皆さんお分かりの通り、これは便利な反面とても怖いものです。
夏の夜と冬の早朝、どちらが美しいと感じるのかは人それぞれです。
春の夜明けと秋の夕暮れ、それぞれの感動を比較するための数値化は非常に難しいのです。
非常に難しいと書きました。
これは、できないと断言できないからです。
なので、フェアなランキングを作ることを考えてみます。
好みなど、人によって判断基準が分かれるものを公正に数値化するためには何が必要でしょうか?
まずは、観点だと思います。
具体例を挙げます。
食べ物は人によっておいしいと感じるポイントも感じ方も違います。具体例として良さそうです。
大学生の男性であれば、安くボリュームのあるご飯に価値を感じるでしょう。
インスタグラムが好きな女性は、フォトジェニックな、かわいくお洒落なご飯に価値を感じるでしょう。
後者は「それはご飯としてではなく、SNSでの表現物を買ったのだ。食べ物という土台で同列に論じること自体が間違っている」という方もおられると思います。
一方で、わざわざ盛り付けが雑なご飯を、おいしそうだと思う人も多くないでしょう。
他の条件が同じであれば、綺麗に盛り付けられたご飯の方が価値があるはずです。
ここでは、その「ご飯としての盛り付けなどの美しさ」としてください。
なのでご飯を評価する際の観点は、味、価格、見た目、量、一食での栄養バランス、などなど。
(価格自体は数値として明らかです。ここでいう「価格」という観点は「このモノに対する値段として高いか安いか」という意味合いです)
そのような観点が必要です。
そして、この観点ごとの採点に主観が入るのはもちろんですが、それ以前に観点の選択自体に主観が入ります。
上記例でいうと、見た目という観点が無いランキングであれば、それはインスタグラムが好きな女性にとって利用価値が低いランキングになります。
また、観点ごとの数値・格付けが同じ重みづけでよいのかというのも考えどころです。
毎日の献立、という観点で見るのであれば栄養バランスは重要視されるでしょう。
しかし、週に一回外食でジャンキーなものを楽しみにしている人にとっては、むしろ必要のない観点です。
どうやら、ランキングを作るにあたっては、できるだけ多くの観点からの採点が必要であり、利用者それぞれが自分にとって必要な観点を選び、重みづけを施して利用する、という仕組みがよさそうです。
先述の食べ物のランキングでいうのであれば
1)A食堂の〇定食も、Bダイニングの△サラダも、多くの観点から多くの人に採点をしてもらい、データにする。
2)利用者が観点を選ぶ。大学生の男性であれば価格、量、味。量に係数を0.5プラスする。インスタグラムが好きな女性であれば見た目、価格(このペルソナの場合、高いから意味があるかも)。見た目に係数を0.7プラス。そんな具合。
3)既存のデータから、選択された観点を抜き出して指定された係数をかけて、順番に並べてランキング表の完成。
このようなイメージになります。
なんだか、フェアっぽい仕組みができそうです。
(実際にITシステムとして作る際は、観点を選択するという手順を省いてすべて係数で片づけるとすっきりします。観点として必要のないものは係数が0、無視です。係数の組み合わせが個人個人で保存しておく必要ができますし、十分なサンプルが取れれば他の情報(性別や年齢など)から、おすすめの係数の組み合わせ、たたき台サンプルをITシステムが提供するイメージです)
が、実現可能性を考えると1)の時点でいきなりつまずきます。
誰かに採点をお願いするのに、観点が抜け落ちる可能性があるからです。
観点の並び順に主観が入る恐れがあるからです。観点が多くなるほど、後の方に提示された観点が真面目に採点されるようには思えません。
そして何より、観点が多いものを採点するというインセンティブ(動機付け)が必要だからです。
このインセンティブ設計がマズいと、まともな採点がされません。
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どうやら、数値化されていない情報(定性情報)をランキングの観点に含めると客観性が損なわれそうです。
では、観点がランキング作成者の主観が入っているから使えないのか、数値化に主観が入っているから使えないのかというと、別問題になります。
世の中の比較やランク付けを、個人が一人で全てにおいて行うことは不可能です。
なので、費用対効果の問題になります。
観点をざっと見まわして、大きな問題がなさそうなら参考にすればいいでしょうし、大きな問題があればその分を割り引いて利用するか利用しない。
数値で順序が並んだとしても、100点満点中85点と86点の差がどこにあるのでしょう。誤差の範囲であれば、それも利用する側の知恵とリテラシーを用いて上手に利用する。
それが成熟した行動なんじゃないかと思います。
疑問を持たずに何でもかんでも信用するのは思考の放棄です。面倒くさがっているだけです。(思考の放棄も費用対効果に行きつきますが)
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というわけで、他人の物差しに頼らず、自分の物差しで生きよう!自分の物差しを作ろう!
という結論になると美しいのですが、実際はそうでもないようで。
100点満点中85点と86点があれば、点数が高い方を選びますよ、やっぱり。
それは「対象の数が多ければ」という条件の下であり、「観点がランキングに反映されていれば」という条件の下ではあります。
(例えば、結婚相談所だと(少なくとも現在は)性格や容姿、雰囲気を数値化できないので上記例には当てはまりません)
さらに、いくら自分は「自分の物差しで生きる」と決意しても「自分の物差しで快適に生きられる」かは別です。そのランキングや数値が十分な信頼を得ているのであれば、他人からはそのスコアに沿った評価をされます。
本当に一人だけで自給自足で生きている人ならともかく、他人との関わり合いの中で他人の目はそれなりに意識することになるように思えます。
だから現在、中国では芝麻信用のスコアを上げようと皆さん躍起になっているのですね。Jスコアも芝麻信用同様、スコアによって特典を受けられます。
AIスコア・リワード(特典)とは | AIスコア・リワード | J.Score(ジェイスコア) - あふれる「未体験」に。
芝麻信用と同じような感じになるかもしれません。
そう考えていくと、数値化した序列は使い勝手がいいんです。
特典を提供する企業側からすると、試供品を使ってもらって広告効果を狙うインフルエンサーの絞り込みだとか。
それこそ、お金のやり取りをする際、そのスコアを落としたくないという思いがあるでしょうから現在のスコア自体が担保になりますし、与信情報としても優秀でしょう。
結果、スコアの実績作りになる経済圏は、スコアが使われるからその経済圏で富が回り、上手に回せばスコアが上がるから利用する人が増え、スコアの母数が増えれば統計を使うことができるようになるのでスコアの精度が増し、そしてさらにスコアが使われるようになる、と。好循環が期待できます。
ここで重要なのは、シェアが一番かそれに近い順位であることです。
非常に多く使われるスコアであることです。
そうなると、やっぱりFacebookさんがスコアリングシステムに手を出すと、相当強いんじゃないかと思います。
どうでもいいんですが、
libraは天秤の意味があり、重量の単位の意味もあります。
そして
正義の女神は剣と天秤を持っています。
力と判断力を備えている、という事のようです。
Facebookさんがlibraを通じて、利用者に寄与する判断の材料と単位をもたらすのであれば、良くも悪くも影響は甚大です。
費用対効果の観点から利用者が思考の放棄・諦めを選択するのではなく、腹落ちして利用できる仕組みと透明性が確保されるといいなぁと思います。
ではでは。
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