かんがえる、かがんでいる人

考えたことをまとめます。

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ESGを数値化することについて(012)~類似概念についてのCSRと改めてESG統一基準の必要性~

このカテゴリ「ESGの数値化」では、漠として判然としない、良く言えば「ふんわり」悪く言えば「ぼんやり」したESGという概念をどうにかして数値化できないか?という試みの記録です。進め方としては、なるべく漏れがないように演繹的に行い理想論で進め、まずは自分の考えを現在の知見でまとめつつ仮説を立て、文献などを調べて仮説を検証しつつ現実に合わせる、という流れで行っています。

 

過去には

ton96o.hatenablog.com

ton96o.hatenablog.com

といった概念を紹介してきました。

今回はCSRです。

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CSRは「Corporate Social Responsibility」の略で企業の社会的責任とでも訳しましょうか。

【3分でわかる】CSRとは? 活動の種類、取り組み方、人事部の役割 - カオナビ人事用語集

こちらによると

CSRとは、企業が組織活動を行うにあたって担う社会的責任のことで、社会的責任とは、従業員や消費者、投資者、環境などへの配慮から社会貢献までの幅広い内容に対して適切な意思決定を行う責任のことです。

おおよそESGのようなものに近づいてきた感があります。個人的にはコーポレートシチズンシップと何が違うのかわからないのですが。

機関投資家も一昔前は、ネガティブスクリーンにCSRを利用しているという話があったと記憶しています。

ton96o.hatenablog.com

こちらの書籍でも「ルールを変える」という文脈の中でCSRは出てきました。

私の中では、一昔前のESGというイメージです。

 

では、2021/09/18現在、CSRはESGやSDGsの中でどのように利用されているのでしょうか?

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ESG投資・ESG経営とは?本当の企業価値を高めるために理解しておきたいポイント | THE OWNER

こちらでは

中略~~つまり、CSRは「企業側の視点」と言える。

それに対してESGは、「社会的責任を果たす企業に投資をすること」を意味する。したがって「投資家側の視点」と言える。この視点の違いが、CSRとESGの違いである。

(上記引用、中略部分は私による加工)

と、されています。(SDGsとの違いはまた別途)

ではこちらの記事を書いた方は「コーポレートシチズンシップ」とCSRの関係をどのように考えているのでしょうか?やはり、私にはいまいち納得できません。

そもそも、私ですら、CSRをネガティブスクリーンとして利用しているという話を聞いたことがある以上、「投資家側の視点」でCSRを見ているように思えます。だから「CSRは企業側の視点、ESGは投資家側の視点」というのはこの記事における独自解釈なのではないかと思うのですね。

 

What’s the difference between CSR and ESG? | alva

But in an increasingly complex landscape, with myriad standards and criteria to judge corporate behaviour against, it has fallen out of step with the sustainability agenda. Enter ESG, the latest evolution of the intentions behind CSR, which provides a framework for greater transparency, greater efforts, and greater good. 

この辺りがしっくりきます。

一応訳を書いておきます。

しかし、企業の行動を判断するための無数の目安と規範を備えたますます複雑化する状況下において、それは持続可能性の議題と歩調を乱しています。CSRにおける本質の最新の進化結果であるESGに参加してください。これは、より高い透明性、より効果的な努力、そしてより大きな利益のためのフレームワークを提供します。

CSRもESGも根っこは同じ、という理解をしました。その最新版がESGである、と。こちらの方がしっくりきます。

一言で表せば

CSR as the precursor of ESG

CSRはESGの先駆け、という事になります。こちらも時系列で感がえれば納得します。

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上記URLの記事について、それ以降はあまり納得感がないものとなります。

The rise of impact investing has led to the demand for ways to rank companies on their ESG performance.

インパクト投資の盛り上がりによって、ESGのパフォーマン測定の需要が高まっている、と。

これはどうなんでしょうか?それ以前にもアクティブ投資家の存在はあったわけで、彼らは、時にはCSRをネガティブスクリーンに、そして時にはCSRが行き届いていないからこそ安く買い自分たちが建て直し高く売る、という事をしたのではないかと思うのです。

私の推測が正しいのであれば、当然CSRの測定ランキングも必要だったと思われます。

だから、測定需要が高まっているというよりも、

What are ESG ratings? | alva

こちらにあるような

To date, there isn’t a single, industry standard system to rate companies against ESG criteria. There are a number of ESG rating agencies, which provide clients with assessments of potential investments based on ESG performance. Major players include MSCI, Vigeo Eiris, Sustainalytics, and RobecoSAM. Each has its own method of calculating ESG scores and rankings, and these can vary widely, making it harder for investors to gain a clear understanding of a company’s ESG profile.

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現在までに、ESG基準に対して企業を評価する業界標準システム(おそらく、認識して測定して記録して報告するという一連の流れ・仕組み、ITシステムのことを指しているのは文脈的におかしい)は一つに定まっていません。世の中には多くのESG格付け機関があり、ESGのパフォーマンスに基づいて潜在的な投資の評価を顧客に提供しています。主要なプレーヤーとして、MSCI、Vigeo Eiris、Sustainalytics、そしてRobecoSAMが存在します。それぞれ、独自のESGスコアとランキングの計算方法を持ち合わせており、これらは大きく異なる可能性があるため、投資家はそれぞれの企業におけるESG像を明確に理解することが困難になります。

このように、格付け機関が参入してビジネスになっている事が要因として大きいのでは?と考えられます。

しかし、こちらの記述を見る限り、MSCIが格付けしたものとVigeo Eirisが格付けしたものは違う可能性がある、と。それはそれぞれが独自の基準を持つからであり、投資家はMSCIが提唱するESGはMSCIの説明を、Vigeo EirisのそれではVigeo Eirisのそれを理解せねばならず煩雑だ、と。

 

これでは需要を充足しているようには思えません。

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というわけで

CSRは企業の社会的責任を言うものであり、コーポレートシチズンシップと同じようなものと捉えてもいいのでは?ESGに内包される概念と捉えてもいいのでは?

・ESGが喧伝されるようになったからと言って投資家を主とする利用者の需要を満たす格付けは現在のところ出てきていない、むしろ格付け機関が独自の基準で格付けを行う事で、利用者は混乱する

・なので、統一された見解が必要

 

私がここまで提唱しているESGスコアでは、ESGの構成要素とされるものを和集合で集め、透明性をもって、しかし経済的に測定し、重みづけは利用者の判断に任せるというものでした。そうすることで、利用者がそれぞれの格付け機関のESG像を理解するのではなく、利用者のESG像をESGスコアからランキングをつけられる、という話になります。

私は統一基準を作ること自体がナンセンスだと思います。

むしろ利用者が確固たるESG像を固める方が重要で、ESGスコアを作る側としては観点の充足と測定の透明性が重要だと考えます。

 

ではでは。

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