かんがえる、かがんでいる人

考えたことをまとめます。

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ESGを数値化することについて(021)~ESG指標利用者の本音とESGスコアの意義に関する補論~

本来であればもう少し体系的に、今回で言えば

JPX ESG Knowledge Hub | 日本取引所グループ

こちらの記事の内どれかを勉強し調べた結果を記事にしたいのですが、寄り道をします。

 

仮説を立て勉強して検証し、また仮説を立てるというサイクルでこの記事は書き続けています。先日の記事の中で

ton96o.hatenablog.com

改めてESGの存在意義に対する懸念が出てきたのです。

特に、スパークスサステナブル投資チームのファンドマネージャー清水裕さんの記事や動画を参照しました。noteあたりに記事が出ていますので、気になる方がいらっしゃれば検索されては?と思います。

(ESGスコアもこのように、何を元にしたのかを明示することで透明性を確保したいと考えています)

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それはすなわち、企業運営にとってESGは添え物でしかないのでは?という懸念です。

ハーズバーグのモチベーション理論風に言えば、現在の企業経営におけるESGは衛生要因でしかないのではないか?と。

換言します、現在の企業経営におけるESGは、ESGにうるさいステークホルダーの批判をかわすだけの意味合いしかないのではないのだろうか?と。それを推進することで中長期的な利益を確保するという確信は、誰もが持っていないのではないかと。

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私はどちらかと言うとそれに賛成する派です。皆、今日明日の事で一生懸命で、それに加えて環境問題にまで手を付けるなんて、できないと思います。正直な話、印象操作であり、好感を持つように仕向けるマーケティングの手法だと思います。

企業に好感を持ってもらう、もしくは、批判をかわす→結果売り上げが伸びるまたは起きるはずだった減少食い止める→利益が生じる、という流れです。

現状のESGの機能がそこにあるのであれば、ESG活動を活発にするあまり、企業の業績に影響を及ぼすようなこと、それは例え日常業務の手間が増える事くらいであっても、そういうマイナスがあるのは「どうかな?」と思います。

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私が就職活動をしている時期、他学部で夏選考まで内定を取れなかった友人がいたのです。その友人は就職活動で環境問題を必死に説いていたようですが、そこまでご縁がありませんでした。意気消沈しており私は気軽に声をかけられませんでした。しかし夏選考で逆転と言っていいのか、財閥系のメーカーに内定が決まり、その面接の中で「今、手を打たないと地球は危ない!」と、あちら様も賛同してくださった、と。

私は「良かったなぁ」と思い祝福したのですが、それからすでに15年。

最近だとその企業は国際認証を取り消されたり、不正が暴露されたりしています。

 

もちろん巨大企業ですので、動き始めるのに時間はかかるでしょうし、多くの人間がいればそりゃトラブルはあるでしょう。一介の面接官程度が新卒の採用面接で言ったことから企業の責任を問うのは乱暴です。何次面接かは知りませんが、1次2次あたりに出てくる若手はようやく独り立ちできる程度のもので後輩の面倒を見れるかな?程度、会社全体の事なんてわかってないのが普通です。

とはいえ、これは環境問題は15年以上前から世の中のトピックの一つであったという証拠になります。それが15年かけて進展していない事の事例です。(進展して達成されていれば「ESG?SDGs?そんなものは我々ははるか昔(15年ですから)に自主的に達成した!」と言えるはずです)

それ以前に、この企業はコーポレートガバナンスが行き届いていません。不正ですよ不正。それで国際認証が取り消されている(されようとしている?)のですから業務に支障が出ます。

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本当に中長期の利益につながるのか?これに対する明確な返答こそが企業運営でESGを使う意義です。ESGを使おうとしている人が誰しも半信半疑なのではないでしょうか?

アクティブ投資家であっても、上記を心から信じていれば有価証券報告書などを見ずともの状況をみて中長期の投資を決めればいいではないですか。一つ覚えのように毎月のように作成されるファンドでは「中長期視点から」なんて書いてあるんですから。過去の数か月もしくは一年における財政状態や経営成績よりよほど確実に未来を予見できるというものです。それをしないという事は、ESGより既存の会計数値を信じてそれが続くことを信じているのだと思うのですよ。本音の部分、無意識の部分では。

人は、言葉では何とでも言いつくろえます。行動が能弁にその人の思想を語ります。

 

ではESGが無意味化と言うとそこまでは私は思っていませんで。

例えば、汚染水をそのままタレ流して公害を起こすような企業は、ESGに反し利益一辺倒を追求したために提訴され敗訴し賠償金を請求され整理された、というストーリーはすぐに思い浮かびます。(そういう事例は高成長時代に起こり、その場合決まった賠償金額はインフレが進むにつれて実質的価値が下がるとか、いろいろあるんですけど置いておきます。)

でも、ESGがなんにでも適用できる素晴らしい概念だとも私は思っていません。

例えば、女性管理職の比率がN%以上の会社だから中長期的に利益を上げることができ、おそらく株価に反映され、投資する対象として相応しいというストーリーは成り立つのか?

私は必ずしも成り立たないと思うのです。

管理職は管理職の能力がある人を任命する仕組みがあればいいだけです。それにはプレイヤーとしての実績が必要ならそれも加味されるでしょう。その結果、男性100%でも女性100%でも、トランスジェンダー100%でも問題はありません。白人100%でも黄色人種100%でも、関係ないはずなのです。繰り返しますが会社に「管理職の能力がある人を任命する仕組みがあればいい」だけなのです。

現在の「女性管理職はN%以上を目標にしましょう」というのは経過目標であって、その真意は「管理職には管理職にふさわしい能力の持ち主を任命する仕組みが必要であり、性別でフィルタリングされるような仕組みであってはならない」というもののはずだと思うのですが。。。。違うんですかね?

「女性活躍指数」的な指標をみていると、私はなんだかモヤンとするのですよ。

モヤモヤモヤン。

女性が管理職の一定割合を占めたから活躍するというのは論理の飛躍ではないですか?

結婚妊娠などによるキャリアの断絶時期を乗り越える仕組みを会社として整えることにより、流出するはずだった人材をつなぎとめることができ、それにより企業業績が上がる(採用コストも下がる)なんて話なら、まだ理解できます。

それでも、人材の継続的な確保とリテンションというだけの話で、それを女性だけに限定するのはおかしな話のはずなのです。止める予定だった有望な若手を引き留める策だって同じカテゴリに分類されるはずです。逆に女性であっても能力が低いなら戻ってこられても企業業績に寄与しません。

「なんだか女性に厳しいね」「優しくないね」

優しさアピールをするために私はこの記事を書いているのではありません。優しくない、で結構。実際の企業が「優しさアピール」をしており、それに対して周囲が実質を見ずイメージに対してなんとなく好感を抱きESGが空虚なものになることに危機感と空しさを覚えるだけです。

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前回に引き続き、私見を書きますが、現状の外部環境の変化は激しく、中長期、一般的には5~10年なんですか?、の、先を見通すことは非常に難しいと言わざるを得ません。

セミナーなんかで、おじさんが中長期計画について語ると、聴講者のおじさんも「そうだそうだ」と偉そうにうなずいていたりして賛同します。一方で若手のスタートアップ経営者が「1年先のこともわからないのに中長期計画なんて意味がない」なんて語ると、聴講生のおじさんは手のひらを返して「そうだそうだ」と偉そうにうなずいていたりして賛同してたりするんです。

そういう場を見ていると、大事なことでも結構、雰囲気に流されて決まっているのではないかと心配になります。

逆に、中長期計画が大事だ、と。外部環境の5年後、それを言えるという人の話を聞いてみればわかりますが、相当抽象的なことを言っているはずです。抽象的なことなら誰でも言えるわけです。

企業運営に活かせそうな中長期の予測など、なかなかないのが現状でしょう。

私は、1年先の事もわからない派です。

その状況で、利益がなかなか出ない中ESGを取り入れ、環境に配慮というのもなかなかにつらいものがあるのではないでしょうか?ある意味SDGsウォッシュとして、ポーズだけ取っておくのは賢い戦略なのかもしれません。

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ESGスコアを作る側から言えば、ESGの状況を透明性と信頼性を持った調査で数字を届ける事だけが目的です。ESGについて「絶対にやらなくては地球が危ない」とは思いません。そういう具体策がない抽象的な勢いだけの発言はバランスを書いた実現性の低い掛け声だけのお調子者がやることだと考えます。

長期的には株価に好影響があるんだぞ!という主張もバランス次第だと思われます。

余計なことして本業に影響を出すよりも、本業でしっかり稼ぎ、余裕分でESGに寄与するというのが現状の落としどころ。落としどころがどこなのかは企業によって違うはず。だから、ESGスコアはただ利用者が気になる要素を客観的に調査し透明性をも提供する、それでいいのかなぁ?と考えます。

 

(十把一からげにESG活動としている時点で私は気持ち悪いんですけども)ESG活動と株価の関係も、その後からついてくる話だと私は考えます。

ESG指標利用者の本音は「収益性が大事なんだけれど、まぁ、ESG的なことも見ておかないとねぇ」くらいのものであり、ESGスコアの意義はそれを利用する人が安心して利用できるような透明性を確保する事だと考えます。

 

ではでは。

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