かんがえる、かがんでいる人

考えたことをまとめます。

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ESGを数値化することについて(023)~上場会社のESG情報開示事例について~

今回は

JPX ESG Knowledge Hub | 日本取引所グループ

における「上場会社のESG情報開示事例」を元に知見を広げていきます。

巨人の肩から世界を見るのは大事なことで、仮説を立てた段階でその検証に先人の知恵を使わない事に意味はないと考えるからです。知識を詰め込んでお勉強です。

 

近年「自分の頭で考えよう」という風潮が強まり、それはそれで素晴らしいコンセプトなのですが、「自分の頭で考えたからこれは価値がある」と盲信したり「仮説である事を忘れて検証をしなくてよい」と錯覚したり。ましてやそのコンセプトを提唱している方におもねるような返信をして媚びを売っている(ように見える)人も跋扈しているようです。

違うと思うんですよね。

自分の頭で考えるのは他人のバイアスに依らない事であり、事実に立脚した仮説を立てる事。仮説ですし、特に私は自分の能力の限界を知っているので、知見のある方の見解や思考プロセスをトレースした検証を行わらざるを得ません。知見のある方と最終的な結論が同じだからOK、ではないのです。そこに至る思考プロセスが重要だと考えています。

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さて、このページの格企業における情報開示の概要を読んでの感想なのですが、特に問題と言う程の問題が見当たりませんでした。が、二つほど企業を上げてコメントを書いておきたいと思います。

 

まずはノムソウです。

上場会社のESG情報開示事例 株式会社野村総合研究所 | 日本取引所グループ

しかし、グローバル標準の情報開示を目指すNRIにとってDJSIへの回答は避けられないものでした。また、DJSIの質問書に答えることには副次的効果もありました。環境のみのCDPとは異なり、DJSIの質問はESG全般に関するもので、設問数も多かったため、網羅的に自社のESG情報開示の弱点を探れたのです。

これは、格付け機関にも「ESGの格付けを行った」をは言えないものがあることを示唆します。ここでいうCDPさんは環境のみの視点から、一方DJSIさんはESG全般という事になります。

さらに前後の記述から、調査は被調査企業に対して相当な負荷がかかる事を意識すべきだと。今回はDJSIさんの質問票がすべて英語で量が多かった点が指摘されています。しかし、ESGスコアでやろうとしていることは、実際の調査です。工場見学・職場見学のようなものでできれば抜き打ち検査だってしたいのです。この調査に係るコストは無視しがたく、被調査会社にとってもそれなりのメリットを提供できなければ気軽にお願いするのもよろしくないと考えます。

しかし、GRIスタンダードに開示すべき情報の詳細が記述されている訳ではありません。情報の粒度や表記は開示側に委ねられています。そのため、NRIでは、DJSI等の質問書で求められている情報に粒度や表記なども、なるべく合わせて開示するようにしました。

また、こちらでは情報の粒度や表記様式の統一化に問題があるという感想を抱きます。この辺りは調査会社の方でテンプレートなりを標準化すべきだろうと思うのです。

評価機関が求める情報の変化に合わせ、高度化していく必要があります。

これは、違うと思われます。

この書き方ですと、評価機関が「お上」であり、それに合わせることになってしまいます。私は個々の企業が時代に合わせたESG活動を行うべきだと思っていて、評価機関におもねることはそれをゆがめることにつながると考えています。

誤解を恐れずに言えば、企業は評価機関に低く格付けされようが、自信がESGだと思う活動を行うべきだと思うのです。それは社会的な要請や利害関係者との絡みもあるでしょう。さらにはESGのGにおいては、戦略上の必要性によって評価機関には苦い顔をされることがあっても仕方ありません。

評価機関が求める情報の変化に合わせるのではないと思うのです。自社が理想として描く経営目標に対しての差分、経営課題にESGがあるのであればそれを解決すべくESG活動を行うべきで、そこには社会的な要請や世論が関係していると思うのです。評価機関は目安にはなっても主従の関係ではないはずです。

 

次、エーザイ

上場会社のESG情報開示事例 エーザイ株式会社 | 日本取引所グループ

社内のESGのKPI 88種類について平均して12年遡って1,088のサンプルをとり、28年分のPBRを被説明変数に設定し、ROEとESGのKPIを説明変数として重回帰分析を行うものです。結果、20%程度のKPIで、統計的な有意差をもって正の相関が示され、エーザイのESGの取り組みは埋没費用ではなく将来価値を生む投資であり、5年から10年の計で遅延浸透効果をもって企業価値を創出することが示唆されました。

非常に気になります。

88種類はどんなもの?平均は単純平均でいいの?1088のサンプルは十分なの?被説明変数はその分析におけるゴールだけれどそれがPBRでいいの?説明変数にROEをいれたら利益の増大分が目的変数に影響するのは当然じゃないの?統計的な有意差とは言うけれど具体的なP値はいくら?今後ESGのKPI達成にコストが多くかかるようになるとどうなの?結局はバランスの問題だから、どこにいくらまでならコストをかけて良いのかを分析しなくていいの?やってるの?など。

それっぽい言葉でお茶を濁されている気がします。

が、実際にESGが企業業績と相関するのか否かを分析していること自体は好感が持てます。

 

今回の感想は、文句をつけているようになってしまいましたが、逆に言えば他の企業様の記事では「文句のつけようがない」のではなく「取り上げる必要がない」という感じでして。一流企業の一流の人材が考えたであろう考える材料を提供していただいた点で非常に感謝します。

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一方で、これらの開示情報という資料(統合報告書など)は「作ってしまう」ことも可能なのですね。数字は嘘をつかないが見せ方は嘘をつくだとか、統計は嘘をつくだとか。見る人が見なければその資料の雰囲気に流されてしまう事も多々あり、決して透明性が高いものとは言えないと思うのです。

先述のエーザイさんの引用文を見て、疑問を持つ方がどのくらいの割合いらっしゃるでしょうか?疑問を持たない人がだめだというよりも、そういう方が多いのであれば、第三者機関が機械的に数値だけを提供するほうが、恣意性が介入しない点で使い勝手の良い指標だと言えるのではないでしょうか?

また、情報を利用する側も、「わかっていて突っ込まない」ことがあるのではないですか?

もう「ここに投資をする」という事が決まっていて、それに対する体裁を整えてください、という場合です。

 

なんだかなぁ。茶番ですよ。

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というわけで、今回は上場企業のESG開示情報事例をお勉強しました。

・情報提供側の意図を排除するのは相当意識的に仕組みづくりをせねばならない

・様式の標準化は必須

・被調査会社のコストに見合うだけの価値を創造できなければ、調査させてもらえない

 

今回はこんなところでしょうか。

ではでは。

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