かんがえる、かがんでいる人

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ESGを数値化することについて(031)~ESG担当者のキャリア~

先日の記事で書きながら引っ掛かりを感じ、それでも書き進めて、読み直して尚違和感を抱き、それでも削除しなかった部分があります。

ton96o.hatenablog.com

Yさん、引継ぎを引き続き頑張るとともにさらに発展できるよう、そしてご自身のキャリアの糧になる仕事ができるよう、頑張ってください。

こちらの部分、キャリアについて言及しているのですね。

自分で書きながら、その意図を本人が説明できないのはおかしいだろう?というのは尤もなご意見なのですが、こちらについてはキャリアの部分を書いた方が心情的に自然だったから書いた、というのが本音です。

じゃぁ、なぜそれがそんなにも引っかかるのかと内観・内省していたのですね。

するとどうやら、わたしは「企業内のESG活動に関わる人の将来キャリアについて明るい未来を実感できていない」としか思えず。

 

今回はそちらについて書きます。

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PPMという考え方が経営学にはありまして。自社事業を市場占有率と市場成長率という二軸四象限に分ける考え方です。問題児・花形・金のなる木・負け犬、と分類されます。ざっくり、事業をタイプ別に分割し資源配分を上手くやりましょうという話で、経営戦略に結びつく話です。具体的には金の流れや人材戦略に影響しいます。金のなる木で得たキャッシュを問題児や花形に投資したり、負け犬は撤退させたり。人材戦略もそれに倣い、人には向き不向きがありますので、ゼロイチが得意な人は問題児事業の、撤退戦が得意な人は負け犬事業の担当になったりするのが普通です。

個人的には撤退戦の指揮官程難しいものはなさそうだと思うのですが、エースが充てられることはそうそうなく、エース自体も花形や場合によっては問題児事業を担当したり、問題児事業そのものの発案者(イントラプレナー)になったりすることがほとんどだと思われます。

 

では、いわゆるESG事業というのは何にあたるのか?

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企業のESG活動自体は全社的な活動であり、その会社の従業員すべてがESGに関与しているはず、というのはどこかで書いた私の考えです。

では、ESG担当というのは何なのか?というと、それはIR・PRなのではないでしょうか?(ざっくりみた感じですと、おおよそIR部署に統合されている感じはします)先述のPPMで言うと(人を食った言い方になって恐縮ですが)どれにあたるかは会社によると考えます。ESGを売りにしている会社であれば世情を鑑みるに金のなる木的事業なのでしょうし、とりあえずやっておくというスタンスの会社であれば負け犬的事業なのだと思われます。「的」とつけたのはIR・PR部門はそれ自体がキャッシュを直接生むことは考えづらくコストセンター・バックオフィスと位置づけられると思うからです。

 

「そうか、ではIRのような意識でキャリア構築を考えていけばいいのだね?」

少し違います。

説明します。

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ESGを機関投資家などがどのように捉えているのか、おおよそ三つに分けられるように思えます。

1)ネガティブスクリーニングに利用する

2)あるのが当然、事業継続の大前提と考える

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3)あえてESG評価が低い企業に投資する、そして自分の力で立て直してESG観点からの評価が高い企業に立て直し価値を創造する

 

私が好きなのは2)や3)の考え方で、「投資家」というのであれば3)であるのがかっこいいのではないかと思います。それらのスタンスからすると、1)は逃げ腰及び腰であり、出資者(投資家)に対してファンド組成者が説明責任を果たすためだけにESGを使っているように感じます。

 

1)の場合、ESG担当者が求められることは多くありません。事実をそのまま伝えればよいし、それに懐疑的なのであれば客観性を示すくらいのことは必要でしょう。

問題は2)や3)だと思われます。

2)の場合、経営戦略と事業戦略がかみ合っている事、それらが円滑に推進するためのESGが整っている事、さらにはそれが向上しているというプラスアルファを的確に伝達する必要があります

3)の場合はもっと高度になって、社内調整をどこかで行わなくてはいけないはずです。もしかすると、ESGの観点からどこに問題があるのかという調査の段階から、担当者の仕事として降ってくるのかもしれません。3)ですと相手は再建屋のようなものですから相当割合の資本を注入しそれなりの影響力を持った株主になっているはずです。その他大勢の個人投資家相手に、財務情報を一方的に説明するのとはレベルが違うはずなのです。場合によっては相手方の意向を組んで社内調整をする過程で、ESG担当者自信が再建屋としてのスキルを求められることになるかもしれません。

それは、例えばESGのにおける経営者の専横を嗜めるという事はさすがに無理でしょうから除くとして、スコープ3に違反するから担当者を変更する、などという場合はその事業担当とのコンフリクトが予想されます。事業担当はコストを意識するでしょうし、ESG担当は株主やESGを意識するからです。

そのような場合、3)の考えの前提としてESGに対する意識が低い企業という前提がありますので、ESG担当にかけられているリソースは少ないはずです。

3)に対応するESG担当の負担は仕事量仕事の質の面でも、担当者の能力に対する求められる仕事という面でも過重なものになることが予想されます。

 

そうなってくると、会社が安易を大事にするのかという優先順位が大事になり、それは会社の所有者である株主か、経営者が決定すべきことです。

今回はESG担当者のキャリアという話ですので。そこを発展させるのはやめます。

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というわけで、

・ESG担当者はIR・PR担当であり、それが花形なのか、とりあえずやっておく低コストでギリギリOKを狙う部署なのかは会社による

・会社の投資家によっては、淡々と情報提供をするだけ済むかもしれないが、あえてESGの意識が低い企業を立て直すという投資家を相手にする場合、ESG担当者の仕事レベルは過重なものとなる

・なぜなら、ESGの意識が低い企業において多くは能力の高い人材が配置されているあ脳性は少なく、その人材が、上手くいっていないものを上手く機能させる再建という高度な仕事を行わなければならないから

・その場合、途中での配置転換、担当者交代も想定しておくべき。しかし、やり切ったのであれば、そのESG担当者のキャリアには大きなプラスになっているはず

 

という話でした。

ではでは。

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