かんがえる、かがんでいる人

考えたことをまとめます。

AI vs. 教科書が読めない子どもたち、を読むべきだという話

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AI vs. 教科書が読めない子どもたちを読んでみました。

 

ベストセラーとして読まれていることもありますが、やはり題名が気になったのです。

AIという新技術について書いてあるだけではなく、現状の子供たちへの警鐘を鳴らしているはずです。しかも、教科書が読めない、とは?

 

読んで、衝撃を受けました。

べっくらこきました。

前半後半との二部構成なのですが、後半が大変重要です。

前半でAIの現状を説明されているのですが、それは付録と言っていい。

 

さて。

 

筆者は数学者です。

東大合格をAIで目指すプロジェクトの指揮をとっています。

彼女ははじめに、で言います。

AIが神に?ならない。AIが人類を?滅ぼさない。シンギュラリティ(人間を超える臨界点)が?到来しない。

我々や我々の子供が生きているくらいの間では、AIが人間の仕事をすべて肩代わりする未来はやってこないといいます。コンピューターは計算機であることを強調します。

一方で、安心はできない、とも言います人間の仕事の多くがAIに代替される社会はすぐそこに迫ってきている、と。人間の強力なライバルになる実力は備えているのです。東ロボは東大には合格できないが、有名私立には合格できるのです。

筆者は、東ロボプロジェクトと並行して、日本人の読解力についての調査と分析を行ったといいます。そこでは深刻な、とてもとても深刻な事態がわかってしまった。

チャップリンのモダンタイムズの時代を例に挙げ、ブルーカラーがホワイトカラーにとってかわるにはタイムラグが存在する。これが今後の世の中に起こることを危惧する。20世紀初頭の世界大恐慌の二の舞が起こらないためにできることは何か。

 

この本を読んでいきたいと思います。

 

 

本文最初に「AIはまだ存在しない」という衝撃的な言葉が目に飛び込みます。

これは人工知能という和訳から、人間と同等レベルの能力がある知能でなくてはならないと筆者は言います。現状の人工知能の目標とは、人工知能の出力を人間の知的活動同等だと感じる程度に近づけることだと。また、ディープラーニングも統計に依ったものであり、統計に限界がある以上、そこにも限界があると。

つまり、巷で「AI」と言われているものは厳密には「AI技術」とのこと。さらには、それを混同して会話などで使う事には弊害があるといいます。

私も「AI」と「AI技術」を混同して使っていた口ですので、気をつけねばとも思うのですが、ディープラーニングよろしく、統計解析に使う程度ですのでそこまで厳密にしなくてもよいのでは?とも思えます。しかし筆者によると、この混同が、実際には存在しないAIを存在していると誤認したり近い将来に存在するという勘違いを起こしているというのです。誤解があるのであれば、正さなくてはなりませんね。

筆者はその点、世間一般で通用するよう、本書ではAI技術をAI、そしてAIの事を「真の意味でのAI」と記述することとしました。ありがたいです。

途中で「真の意味でのAI」と書くのに疲れてらっしゃいますが、ま、人間ですから。疲れますよ。

東ロボプロジェクトに話は移ります。ここで筆者がしたかったことは東大に合格するAIを作りたかったのではなく、AIの限界、現状何ができて何ができないのか、を知ること、そして、理屈としてどうしてもできない事は何なのかを知ることでした。しかし、このセンセーショナルなテーマから、「AIは東大に入れる」という間違ったメッセージを世に送ってしまったそうです。

新しい技術ができた時、我々利用者が、まずしなくてはいけないことは何でしょう?

本質的な理解ができれば一番良いのですが、なかなかそううまくはいかず。

私は、できる事とできない事を分け、その限界を見極めることだと考えます。さらには、現状、走っている研究開発を調査し、何ができそうなのかをウォッチできれば競争力の源泉になり得ます。

現状での限界点、そして、広がっていく「できること」を公開する。まさに東ロボプロジェクトはAIにおけるそれを実現するためのプロジェクトだったのです。

その後本文はAIの歴史が語られます。

機械学習は皆さん聞いたことがあると思います。これは統計的な方法論で、ビッグデータが必要になります。(つまり現状の機械学習はITの普及によるビッグデータが採取可能になったから実現しています。機械学習のインフラの一つが、ITによるデータ採取機能であるといっていい。)ある画像からイチゴを検出させるのに、人間であれば10個程度画像を見せればよいが、AIでは万、億という単位のデータが必要と筆者は言います。教師データと特徴量という、昔は人間が職人芸で行っていた調整値を説明します。

(参考;AIの教育に必要な二つの要素と、AIの利用に必要な二つのポイントについて考えた

そしてディープラーニング。深層学習という別名もあります。ディープラーニングでは機械学習では職人技だった特徴量の設計を自分で最適化できます。

筆者は、ディープラーニングを、「大量のデータを用意すれば自律的に学習し、人間にわからない真の答えを出してくれる仕組み」ではなく決まりの中で、十分なデータを準備すれば低コストで今までと同等かそれを超える正解率に到達しやすい仕組み」とし、「夢のような誤解」をすることに警鐘を鳴らします。このようにAIにまつわる歴史を紐解きつつ、筆者は誤解を説明します。

続いて、IBMのワトソンの、クイズ番組「ジョパディ!」での活躍、コールセンターでの音声認識AIを通じて、実際の動きを具体的に、そしてやや、限界を強調しつつ「想像できる」としています。

 

東ロボプロジェクトでは、そのAIがどのように発展して来たのでしょうか?

研究者にそれぞれ担当したい(攻略したい)科目を選択してもらい、それぞれ別のアプローチをとったそうです。

世界史では、オントロジーという、「コンピューターに物事を理解させるために付ける名前や分類」が活躍したそうです。(マジャール人は民族である、死んだ人はそれ以降の事柄を起こせない、というような、定義づけのようなもののようです。)

数学では、数学の問題文を数式に変換するという方法がとられました。どれだけ難解かは本文をお読みいただきたいと思います。

国語では文字の重複など、表面的な事から選択肢を選ぶという荒業で正答率五割。(その後の成長は見込めなかったようですが)これ、清水義範さんあたりが喜びそうですよ。長短除外の法とか言って。

英語は本当に難しかったらしく、常識の壁に阻まれます。

それらの努力の結果、東ロボは東大模試(理系)、にて偏差値76.2!素晴らしい成績を収めました。しかし筆者は言います。「私は手放しで喜ぶことはできませんでした、多くのホワイトカラーの職がAIに奪われるという予想が現実のものになることを意味するからです。」

ここが筆者の偉いところで、「どうすれば東ロボ君に負けた80%の子どもたちに明るい未来を提供できるのか。そのことと真剣に向き合わなければならない」と決意されます。(点数だけで負けたもくそもない、と私は思うのですが、事務処理能力でAIは相当な域に達しているという表現ということでご理解ください。)

筆者はAIの限界をさらに説きます。

コンピューターには人間にとって自然なものがわからない。

上記、英語で出てきた、常識の壁。

英語という科目において、研究者は限界を目撃したとされます。

これこそが東ロボプロジェクトの意義であり、論文に掲載されない価値である、と。

 

次に

筆者は数学の歴史から、人間は「論理」「確率」「統計」を獲得してきたと説明します。

逆に、数学が説明できることは

・論理という構造

・確率という理論から予測する結果

・統計という、データを分析して仮説を見つける手法

であり、非常に限られているといいます。

それはコンピューターにおいての、すべての武器であり、非ノイマン型であろうともそうだといいます。

AIは結局のところ計算機なので、数学の言葉、すなわち「論理」「確率」「統計」のいずれかに置き換えなければなりません、真の意味でのAIは私たちの知能の営みをすべて数学の言葉に置き換えなければ成立しえないということになります。それを置き換えることが不可能である以上、真の意味でのAIは成立しません。

数学は意味を表現できないのです。現在のAIの延長では偏差値65の壁は越えられないと筆者は言います。

この、コンピューターに「意味」が理解できないという点が非常に大きな問題になります。これは、上記、英語の攻略でよく表されています。自然言語処理は論理では攻略できないのだそうです。現在のGoogle検索も、キーワード補完も統計的手法によって行われているのはご存知ですね?昔は、自然言語処理にて、論理的・演繹的な手法で精度を上げようとしたそうです。しかしうまくいかない。統計はよく当たるのでその方法が採用されている。ただそれだけの事なのだそうです。

コンピューターに意味は理解できないのです。

それはなぜなら、数学的に「意味」を表現できないから。

自然言語ではルールは精緻で複雑で、しかも最も悪いことに、時代によって変化する。我々はルールを学びつつ、それを使うという非常に高度な事を成しているのです。

 

筆者は続けます。

言語化し、数値化し、測定し、数理モデル化するという事は、つまり「無理に片付ける」ことなのだ、と。

素晴らしい景色を見た時、絵にも書けないと表現するのすら野暮なのであれば、どこぞの詩人らしく「いちめんのなのはな」で紙面を埋めるのもいいのかもしれません。

その、何かが欠けていく痛みを知っている人だけが、一流の科学者や技術者足りうるのだそうです。

(参考;理論を理解する前提~補足~

筆者が科学者として肝に銘じていることを教えていただけます。それは、科学を過信せず、科学の限界に謙虚であること、だそうです。

 

ここで本書は大きな転換を迎えます。

AIの限界を説明したうえで、これからの社会がどうなるかを考えます。

筆者は、AIに代替不可能な職業は、コミュニケーション能力や理解力を求められる仕事、柔軟な判断力が求められる肉体労働だといいます。AIの限界の根本には「意味がわからない」ということがあり、その反対、応用力・柔軟性・発想力があればAI恐るるに足らずと言います。

では、現状、我々はその能力を十分に備えているといえるのか?

どうやら怪しそうなのです。

 

日本の中高生の読解力は危機的状況だそうです。

それは、教科書の記述を正確に読み取ることができない、という私が「へ?」という反応をしそうな、嘘のような話が書かれています。

世界的な調査で日本の学生は読解力部門でトップ10入りしているにもかかわらず、だそうです。

・簡単な数学の問題で理由を説明できない。

・単なる文章をベン図で思い浮かべればいいだけの正答率が低い。

・短文の意味が理解できていない。

??みんな焦っているか、プレッシャーでうまく答えられていないんじゃ??

と思ったのですが本文を読み進めると、相当慎重に調査されているようでして。

 

思い当たることがありました。

私は、仕事で人に話を聞いてもらうことがあるのですが、その際にうまくやり取りができないときがあります。

私の話が伝わらないのです。

私の伝える能力が低いことの言い訳には全くなりません。それを承知で申し上げます。

これ、周りの環境に依るんです。

実は、私が同じことを言っても、すっとわかってくれる方(賛成はできない時があるけど、言ってることは問題なく理解できる)と、何言ってるんだ?(賛成か反対かの前に、私が言ったことを理解できない)という反応をされる方に分かれるんです。

尖ったこと、極端な事をいえば、それに応じて反応が極端です。

どれだけ尖っていようが、理解できる人は論理構造を理解できるんです。

その理由が分かった気がします。

 

受験勉強のドラマや漫画で、よく国語担当の教師が出てきてこんなことをいいます「国語の時間が少なすぎます。増やしてください。」そうすると英語や数学の教師から反発されます「入試を突破するのに非効率だ!」そして国語教師はこう返します「国語は基礎です、読解力は英語や数学にも必要なものです」

それで、ドラマや漫画の世界だと、生徒の成績が急激に、グーンと伸びたりなんかして。面白いもんだなぁと思っていたのですが、そうは言ってられないのが現状なんですね。

 

最終的に、AIに代替されない人材になるために、意味を理解する人材になるべきだと筆者は主張します。

統計に使われる人でなく、使う人になるべきです。

AIに使われる人でなく、使う人になるべきです。

データを収集しブラックボックスに入力するだけの人でなく、データから意味を見つける人になるべきです。

 

そしてほぼ日刊イトイ新聞を例に、新しいビジネスに言及します。

商品にそのレーゾンデートルを与えるべきだと。

商品にストーリーを与えるべきだと。

つまりは、意味を与える事、意味を作ることができる人にならねばならないと私は理解しました。

この辺りはちきりんさんのマーケット感覚を身につけよう、にも通じるものがあると思います。

 

我々は変わらなければならない。AIによってルーチンワークから解放されるのですから。

人間にしかできない事で価値を創造しなくてはなりません。

まずは意味を理解する人間になることです。

ここで重要なのは?SoWhat?

具体的に考えると、あなたの答えはどうなるでしょうか?

(参考;だから何?を五回繰り返せ!

 

筆者は最後に言います。

「中学校一年生全員に無償で読解力検査を提供し、中学卒業までに全員が教科書を読めるようにして、卒業させること」を目指しているそうです。

それには元手が足らないので、本の印税を受け取らないことに決めたそうです。

漢気にあふれるじゃないですか。(著者は女性)

本書がベストセラーであるわけがわかりました。

本記事にもあるAmazonへのリンクは、アフィリエイトではないリンクにしてあります。

是非、皆様も本書を購入し、ご自身で読んでみてください。

お子様がおられる方は、教科書が読めるように大事に育ててあげてください。

これが後々の世界にとって、良いことだと私は信じます。

お願いします。

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