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ESGを数値化することについて(015)~類似概念についての環境会計~

このカテゴリ「ESGの数値化」では、漠として判然としない、良く言えば「ふんわり」悪く言えば「ぼんやり」したESGという概念をどうにかして数値化できないか?という試みの記録です。進め方としては、なるべく漏れがないように演繹的に行い理想論で進め、まずは自分の考えを現在の知見でまとめつつ仮説を立て、文献などを調べて仮説を検証しつつ現実に合わせる、という流れで行っています。

 

今回はESGと類似概念である環境会計について、記事を書きます。

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まずはオフィシャルっぽい所で

環境省_環境会計

こちらを紹介します。定義が

環境会計とは、企業等が、持続可能な発展を目指して、社会との良好な関係を保ちつつ、環境保全への取組を効率的かつ効果的に推進していくことを目的として、事業活動における環境保全のためのコストとその活動により得られた効果を認識し、可能な限り定量的(貨幣単位又は物量単位)に測定し伝達する仕組みです。

とされていますので、環境保全が目的であり、それを定量的に認識・測定・記録・報告する仕組みと言えるだろうと思われます。ESGで言えばEであり、私が考えてきているESGスコアで言えば定量的・数値化という点で類似していると言えそうです。

内部機能と外部機能と分けられていますが、会計でも「管理会計」と「財務会計

と分けられていますので、そこはさして斬新な概念ではありません。

自然資本会計というものは私は知りませんでしたので、次はその自然資本会計を見ていきます。

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平成27年度環境会計・自然資本会計のあり方に関する課題等調査検討業務(報告書)PDF

に基づいて、以下、記事を書き進めます。

要旨をざっくりまとめますと「課題と提言を抽出した。課題はガイドライン策定が難しい事だが、自然資本会計へのニーズは増しており特に「自然資本プロトコル」は注目を集める。提言としては、環境会計の意義の明確化を図り利用者・提供者双方の利便性を向上させるとともにリテラシーを向上させる必要がある。さらには他の類似概念との整合性、国際的な整合性を図る必要がある」というものでした。

調べれば調べるだけ、カジュアルな言い方になってしまいますが、沼にはまります。これは悪い意味を含意するのではなく、深い知見の集合体という意味です。

これらを一つ一つ正確に精緻に検証し咀嚼していたのでは、いくら時間があっても足りません。幸いなことに先述のPDFでは国内において自然資本会計に関する知見をお持ちの方・企業が匿名ではありますがその特徴とともに記述されています。そこから実名を探るのは決して難しい作業ではありません。

このような資料があることを頭に入れておけば、何らかの参考資料として立ち戻ることもできます。(個人的には自然資本のシャドープライスに興味を持ちました)

日経新聞さんの環境経営度調査などについての言及もあり、今後の道のりを認識するとともに検証材料の豊富さを喜びます。

日経リサーチ、2019年版「環境経営度調査」の報告書やベンチマークレポートなど関連商品を発売: 日本経済新聞

 

で、ですね。自然資本に関する論文を数種類読んだ感想ですが。絶対数が不足している事を自覚したうえで現状報告しますと、次のようなイメージをしていただければよいと思われます。

あなたは農業を営んでいるとします。経済合理性から言えば化学肥料を使って人工的に土地を肥やして連作するのが合理的だとします。ですが自然資本という考え方を取り入れると、土地の恵み・自然の恵みに値段がつくのですね。それゆえ、その損失にも値段がつくので意思決定が変わる可能性があります。例えば化学肥料を使っても連作で土地が痛み、休耕地となる期間が長く場合によっては使えなくなるような場合を考慮する、といった具合です。

今回はすごく簡単で単純な意思決定でしたので「経済的合理性」の範囲で片づけられた話だったかもしれません。しかし、より長期でより視野を広く持った上での意思決定に役立つ観点だという事は伝わったと思います。(先述のPDFですと33pに具体例が載っていますのでご参照ください)

 

インタビューにおける環境会計の意義・有効性については悲惨という印象を強く受けました。環境会計も自然資本会計も手段なのだから目的に合致させねばならない。その目的に寄与できていない、という話です。ただ、参照したPDFは2015年、一昔前のものです。情報に対する需要が増大しておりそれに伴うイメージアップなどの効果が見込めるのであればPR・IRとしての価値は十分にあると感じます。

それにはもちろん効果測定が必要ですが。

また、情報を出すことの負担感、要するにコストですね、それが大きいと使われなくなるという懸念も示されており、納得するものです。測定はESGスコアを作成するものが行う、というスタンスであってもそれは企業の機密情報に触れるかもしれない事であり、センシティブな行為です。そこに透明性を持ち込むのであれば尚更です。

ここにも問題が生じますね。実際の測定を企業に任せ、それを監査するのがESGスコア測定のプロセスというのはどうでしょう?そうすれば以前論点として挙げた「ESGスコアの測定における透明性確保のため監査をつければ、その監査の透明性確保のための監査が必要になり、、、、」という入れ子構造をとどめられるのではないか、少なくとも現時点で上場企業が出している有価証券報告書に対する意見書と同じ効力は持ち得るのではないか?同じ監査手続きや手法、テクニックが使えるのではないか?と思うのですがいかがでしょう?

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今後の進め方について。

改めて学習の利便性と危険性を認識しました。知らないことを知るのは楽しいのです。自分の仮説を検証する答え合わせは楽しいのです。ですがそれに夢中になってはただの趣味に終わってしまいます。

現状のブログ執筆は趣味に分類されるでしょうが、それでも実現可能性を念頭において進めるためには、筋道を立てて進め方を考えつつ、時には修正しつつせねばなりません。

今回の資料の精読においてGPIFのPRI署名という点が何か所かで指摘されていました。

次は、PRI署名について記事を書こうと考えます。

それは、ESGスコアができた暁に主な利用者と想定されるアクティブファンドが署名しているはずのものであり、環境会計や自然資本会計の意義のみならず、ESGスコアの意義にも関係してくると思うからです。

 

ではでは。

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