かんがえる、かがんでいる人

考えたことをまとめます。

?

ESGを数値化することについて(020)~ESG指標利用時の問題点と指標作成者側からの解決~

巷では様々な指標が溢れ、ESGに関するものも例に漏れません。

今回は、私が想定している理想のESG指標、ESGスコアの利用者が誰なのかを改めて考え、そこに起こりうる問題は何かを考えます。

ここでは、一般的に作成されているものをESG指標といい、私が想定しているものをESGスコアと呼ぶことにします。

----------------(‘ω’ っ )

利用者は基本的にアクティブ投資家を想定します。インデックス投資家はインデックスそのものを購入するだけなので他の指標が入る余地がありません。

S&P500と何らかのESG指標を組み合わせるとしたら、それはもうアクティブ投資だと考えます。

 

アクティブ投資において何らかのESG指標を利用する必然はどこにあるでしょうか?

表現を考えずに率直に言えば、責任の転換にあると考えます。

 

アクティブ投資家のおおよその動きとしては

・マクロ的な世の中の流れを分析

・個別銘柄を分析

・ESG指標を使うのであれば個別銘柄分析時に使うか、個別銘柄を分析し終わった後のネガティブスクリーンに使うことが多い

という流れになると思われます。(というか目論見書あたりからだとこの程度しかわからないんですよね)

 

ESG指標を使うのはそれが正しいことを前提として、ESGの観点を取り入れているという事になります。それが時には「ESGに関して一定水準を満たしていない企業は投資対象にしない」という意図であるか「ESGに積極的・卓越した運動を行っている会社に投資する」という意図であるかは各社の判断に依ります。

----------------(‘ω’ っ )

一方で、

機関投資家のESG投資 | 日本取引所グループ

こちらでは各社の利用状況が

スパークスさんは

ESGレーティングは投資プロセスの中でどのように使われているか ~サステナリティクスのデータを事例に~|清水裕|スパークス・アセット・マネジメント|note

ファンドマネージャーによるESGデータの解説|清水裕|スパークス・アセット・マネジメント|note

これらの記事で非常によく説明されておられる印象を受けます。

 

各社、様々なポリシーをお持ちですが気になる点もいくつかあります。

 

ESGの情報を発信して欲しいというような要望が散見されたのですが、この点は制度が確立されなければ一方的なPRで終わってしまうように思われます。その「言い分」の客観性と真実性が担保されているわけではないからです。形式も統一されている方が利用しやすいのは当然です。

そうなると非財務情報を有価証券報告書などと一緒に出しましょうという事になり、それに説得力や客観性をおそらく公認会計士監査法人)が担う(適正意見などを出す)というのが落としどころなのかと思われます。

非財務情報・ESGに関する研究・調査 | 日本公認会計士協会

 

また、中長期の視点で、という文言が散見されることも気になります。投資の世界では長期投資が絶対的な善のようにとらえられているようで、神聖視されているようにすら思えます。高度に分散された、例えばS&P500やMSCIコクサイなどの低コストインデックス金融商品であれば、長期保有は原則・鉄則としてよろしいかと思います。しかしアクティブ投資家が投資する先は、一企業です。2年後3年後にはどうなっているのかわからないという企業が大半ではないでしょうか?投資対象企業が脆弱という意味でなく、企業がおかれている環境の変化速度が早いという意味であり、だから何十年もかけて成果が顕現する「ESG」と「企業の継続企業の前提(GC)」とは、統合して考慮するには相当難易度が高いと思われるのです。

(というか、全体的に統一感が無く様式が定まっていないため各社の横の比較がしづらい記事です。また、抽象的な文言が多く、例えば中長期という文言ですら、おそらく3~5年を指すのでしょうが、何年を指すのかが明示されていません。詰めが甘いというか明言を避けている印象があります。)

 

スパークスさんのnoteの記事をいくつか紹介しましたが、さらに紹介させてください。

評価機関がカバーしていない企業のESGをどのように評価するか~キュービーネットホールディングスを事例に~|清水裕|スパークス・アセット・マネジメント|note

こちらが白眉です。

----------------(‘ω’ っ )

現状のESG指標の利用者は、実は、責任転嫁をしているのかもしれない。

ESG指標そのものを盲信するのではなく、その算出プロセスにも目を向け健全な疑いの目を保持するべきである。

これはアクティブ投資家に対して投資を行う「投資家」にも言えることで、何をもってESG投資としているのか?、利用している指標は何か?、その指標は何をもってその数値を算出しているのか?を、やろうと思えば「投資家」が再検証できるようにしておくのが理想。

場合によってはアクティブ投資家自身が、そのESGの調査を行うべき(それはそれでスパークスさんの記事にもあるような主観性などの問題があります)

 

という話でした。

そう書くからには、ESGスコアを作る場合、外部からの客観性を再確認できる透明性の維持自体が相当な価値になりそうです。

 

ではでは。

?