かんがえる、かがんでいる人

考えたことをまとめます。

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損益分岐点に関するちょっとした深堀

前回更新が昨年の12月。現在3月。
なんというかその。あけましておめでとうございます。

 

あんまり更新していないのもアレなので、損益分岐点(以下BEP)の事でも書きます。
簡単なものは過去に書いてあるので、それを少し進めます。

ton96o.hatenablog.com

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損益分岐点というのは

これですね。
管理会計経営学をかじった事のある方ならどこかで見た図だと思います。

これだけだと不親切なのでもう少し付け加えましょう。

収益はこの場合イコール売上と考えて結構です。
x軸が収益、y軸が費用です。費用が最初からプラスになっている(=売上がなくてもかかる費用がある)というのは現実に即していますね。固定費です。
y=ax+bがキモで、切片である固定費をなるべく下げるか、変動費であるaを少なくするかという工夫をしてy=xとの交点であるBEPをなるべく左にもっていくことがゴールです。
(y=xの意義は「費用=収益」という補助線です。だから現実に上げた売上に対する収益の関数との交点が「費用=収益」であるBEPとなります。)


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さらっと書いたのですが、現実にはこんな簡単に物事は進みません。

まず、全社でこの簡単なグラフに収まることはまずありません。例えばA事業部とB事業部と・・・・という具合に事業部ごとに分けて考えたりします。それぞれの事業でBEPは違うでしょうし、それぞれの事業部の事情を鑑みつつ戦略を練るという実用性を考えても分けた方が有用な場合があるでしょう。その場合、総務や経理などバックオフィスの負担をどの事業部がどれだけ負担するかが問題になったりします。固定費の配分ですね。これで各事業部長が侃侃諤諤喧々諤々の罵り合い…じゃなかった、激しい舌戦を繰り広げたりします。(管理会計における配賦辺りをご想像ください)

もっと言えば、y=ax+bなんて単純な線形に収まるはずはありません。
現実社会で起こるおおよその物事はおおよそグニャグニャっとしたものであり、時にそれは不連続でさえあるのです。
ご想像ください。例えば1億円前後の売上を上げている会社が上記の分析に当てはめてy=ax+bを作ったとします。その会社が100億円を目指すとしたら?そのy=ax+bが適用できるはずがありません。大規模な設備投資が必要ですし人員の補充と教育コストも必要、場合によってはオフィスの移転や人事制度・給与制度の改定などを行わなければならないかもしれません。
大幅な費用の増加が容易に想像できるはずです。

 

CVP分析は革新やイノベーションよりもカイゼンにおいて役に立つものだと言えましょう。

 

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ですが、今回は少し深堀をしますので革新やイノベーションも視野に入れたいと考えます。
収益に対する費用の関数ですが、まずは二つ考えてみます。
・対数関数グラフ

・指数関数グラフ
です。

ですね。

この記事ではもっとやさしく、それぞれ「上に凸」「下に凸」と呼ぶことにします。

収益に対する費用が「上に凸の関数」「下に凸の関数」の場合、どのような性質が考えられるでしょうか?

 

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何かを比較する時、見たい部分以外は条件を同じにする必要があります。
今回は
BEPが同じ場合

・固定費が同じ場合
を考えてみます。

それぞれグラフはこんな感じです。

上に凸のグラフはオレンジ、下に凸のグラフはグレイにしました。

両グラフを見比べると以下のような性質が分かります。
・上に凸のグラフはBEPを超えた後の売上を伸ばす「うま味」が大きい(= y=xとの差分が大きい)。なので、責任者は売上をできるだけ伸ばす事が効果的。但しそれが従業員満足度(ES)に貢献するかどうかは別問題。サービス残業で売上増加に伴う変動費増を抑え込んでいるのであればES(エンプロイーサティスファクション)は下がるだろうし、上に凸の形を保ったまま売上にインセンティブがつくような給与体系なら従業員は納得するだろう。
・逆に、下に凸のグラフはBEPを超えた後の売上を伸ばす「うま味」が少ない。但しそれは変曲点の位置にもよる
 ・y=xとの交点がない場合及び接する場合
  できるだけダメージ少なく撤退すべき
 ・y=xとの交点はあるが、BEPより左に変曲点がある(費用が急増する)場合
  一応利益を出すことはできるが、売上が上がる程費用が急増する構造
  利益が出る売上範囲が狭い
  構造がおかしいので撤退するか改善・改革が必要
 ・BEPより右に変曲点がある場合
  利益を出すことはできる
  しかし売上に応じて費用が急増する事が分かっているので、黒字が出る範囲内で売上を調整し黒字の最大化を図るという数学の問題を解くような事をしなくてはならない
・下に凸のグラフはどれだけ変曲点を右に持って行けるか、そして変動費の急増分を小さくできるかが肝心

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上に凸のモデルはDXに成功したビジネスモデル、下に凸のモデルは労働集約的なビジネスモデルと考えるとイメージしやすいでしょう。ネトフリあたりの動画配信サービスと映画館、と具体的に考えるとお分かりいただけるかと思います。

となると、上に凸のモデルはとにかく稼働率を上げて売上を伸ばすことに腐心すべきです。一方で下に凸のモデルは先述の通り「y=x」との差分最大化を狙うのですが、BEPが同じ場合固定費が高い仕組みであり、売上を「上げ過ぎ」れば再度「y=x」とぶつかり赤字になる事が明白である以上、早期のビジネスモデルの変革が必要でしょう。

 

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ここで、「実店舗経営はダメだ。DXをやるんだ。今すぐに!!」なんて言うつもりはありません。むしろ「なぜ今でも実店舗があるのか?」を考えることが重要だと思われます。先ほどの例で言えば、ネトフリがあるのに映画館が存在する意義ですね。

デジタルではいけないものが現実にはあるのだと思うのです。
大事なのは、その需要を見つつ弱点がある事に真正面から向き合い対峙する事だと思われます。
規模を大きくしなくていいのであれば「売上が多すぎて赤字になる」事の心配など無用です。映画館は、限られた顧客が離れていかないように、実店舗にしかできない価値を提供すればいいと思うのです。

衣食住。人間に必要なものですね。これらがデジタル化したという話は未だに聞きません。人間はデジタルデータを着る事も食べる事も、二次元に住むこともできません。
ただ、ITを使って、デジタルデータを使って、より便利に衣食住を生産し楽しむことは可能です。AIがデザインした服を着ても良いですし3Dプリンタで作った家に住むことだってできます。

さらに言えば、ネトフリなどのDXされたビジネスモデルだっていつかは限界が来ます。

いつから変曲点は一つだと錯覚していた?

BEPを超えるか超えないか辺りまでは上に凸、そこから先は下に凸のグラフです。

学習曲線などがS字カーブを描くように、収益と費用の関係も同様になる事はあり得ます(曲がり加減が逆ですが)。
ネトフリだと想像しづらいので、地方のローカルケーブルテレビがネット配信を自前で始めたとしましょう。DXです。当初の想定視聴者数を大幅に超えるとサーバーはパンパンになり、そして落ちます。赤字です。信用問題にすら発展するかもしれません。そうなると巨額の設備投資が必要になります。
如何でしょう?ありそうではないでしょうか?

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もっとも、それはカイゼンの域を超えた範囲の事であり、CVP分析の領分を超えていると書いた通りです。実際は冒頭に書いた通り、収益と費用との関係はグニャグニャで不連続ですらあります。

その関数を割と正確に導出できたのなら、多分、諸々が「いつもの範囲」に収まる事を前提として、微分した値が一番役に立つんじゃないでしょうか?


それを、どうにかこうにかまとめ上げ、判断し、カイゼンを実行するのが一番大事なんですけども。

 

ではでは。

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