ESGを数値化できないかなぁ?と試行錯誤しています。仮説を立てて先人の知恵を学んで検証し、また仮説を立てるというサイクルで回しています。
つい先日まで、「フィランソロピー」「コーポレートシチズンシップ」というESGと類似概念について記事にし、その後ちょろっと横日にそれた後「環境会計」について書きました。
環境会計を後回しにしたのは次の話につなげたかったからでして。
そこはぜひ前回の記事を読んでいただきたく思います。
環境会計の具体的な話にはタッチしていません。そこにはまると大きな流れからそれると考えるからです。
大事なのは、日本における環境会計のオフィシャルであろう環境省が、「この人なら環境会計について一家言持ってるだろう」と選んだ専門家または団体が、ことごとく「環境会計は目的でなく手段、環境会計を使う意義はどういうもくてきかをせっていせねばならぬ」とおっしゃっている点を理解していただきたかったのですね。
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それは現在私が構想しているESGスコアにも当てはまる話です。
ESGスコアを出すことそれ自体が目的になる事はあり得ません。何かのアクティビティ自体が経験価値を持つことはあり得ますし実験段階でならそれもいいのかもしれませんが、殊にESGという観点から数値化しようとする試みがそれで合っていいはずはないのです。
前回
次は、PRI署名について記事を書こうと考えます。
それは、ESGスコアができた暁に主な利用者と想定されるアクティブファンドが署名しているはずのものであり、環境会計や自然資本会計の意義のみならず、ESGスコアの意義にも関係してくると思うからです。
と書きました。
今回はESGスコアの利用者とその利用の仕方という観点からESGスコアの意義について書いていきたいと考えます。
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PRI署名というのは投資の主体が「ESGに配慮した投資を行う」という宣言、と理解しています。
ソーシャルレンディング業界では
《国内クラウドファンディング事業者初》責任投資原則(PRI)への署名について|ニュース|NEXTSHIFT
こんなニュースもありました。もちろん「国内クラウドファンディング事業者」で初というだけです。一般的には日本の年金機構や保険会社、そして運用会社が署名をしている点がよく知られている事でしょう。
つまり、PRI署名について調べ、そこでESGがどのように使われているのかを知れば、現状のESGスコアはどの程度役に立てるかを知ることができるのではないかと踏んだのです。
それらの流れを作りたくて、類似概念の内環境会計を一番最後にしています。
環境会計の内容は、私が改めて勉強することも必要でしょうから、必要だという事になった時に頑張ろうと思います。
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というわけで、PRI署名です。
オフィシャルは
こちらですね。勉強は嫌いな方ではないので、一つ一つ読んで知見を深めたいという誘惑に駆られますが、必要部分をざっくりまとめていきたいと思います。
ざっくり、PRI署名を念頭に置いた投資を行う事で、投資を行う主体に利益があり、それらが運営されている金融市場にも好影響があり、環境や社会全体への好影響がある、と主張されています。
実際にそれが実現できているかどうかは知りませんが、それらを目指している、という事ですね。逆に言えば、それらに役に立つようなESGスコアでなければならないと、要件が決まった事にもなります。
6つの原則が重要っぽいのですが、そこは飛ばして「使命」の部分を見てみましょう。
「長期的で責任ある投資を行う事で、経済的に効率的かつ持続可能でグローバルな金融市場は長期的な価値創造を行うことができる。このシステムは、長期的で責任ある投資に利益をもたらすと同時に環境と社会に便益をもたらす」
「PRIにより、ガバナンス。誠実性・説明責任は促進され、市場慣行や構造そして規制内の障害への障害が成される。原則の採用と実施を行う事により、上記持続可能でグローバルな金融システムの実現に努める」
という事は、あくまで金融システムに資するという話で、投資にESGを利用しましょうという話になります。壇上は新しいものではなく既存の金融市場、それを持続可能なものにし、ESGの観点を取り入れた、これから説明するのですが、6つの原則を実施すれば、投資家にはリターンを環境には便益をもたらすと。
では次に6つの原則についてみていきます。
ページは飛んでこちらになります。
What are the Principles for Responsible Investment? | PRI Web Page | PRI
1)投資分析と投資決定プロセスにESGの観点を組み入れる
2)モノ言う株主としてESG問題を理由に売買することがある
3)投資先にESGに関する開示を求める
4)投資業界においてこの原則の受け入れと実践を促進する
5)原則の実施において、署名をした皆が協力をする
6)活動実績を報告する
随分と意訳した部分がありますが、こんなところでしょうか。
詳細な内容が書いてはあったのですが、「評価する」とか「トレーニングする」とか「報告する」等。私が求める具体性は備えているものではありませんでした。
もう少し、例えば実際に報告された内容などを見てみると具体的にわかるのかもしれません。
名ばかりESGを淘汰 投信の開示厳格化、課題は運用力: 日本経済新聞
こういうニュースもあります。ESGスコアを使っていれば「こういう観点でESGファンドです」と言えます。原則の1)ですね。
(なお、金融庁の若い方と電話で話したところ、このニュースを知りませんでした。ニュースがあった二日後辺りに話をしたんですが。金融庁って担当業務もあまり良くできていないようですし、自分たちが絡んでいるトレンドもどうでもよさそうです。私はあまり金融庁に良い感情を持っていません)
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今回の目的はPRIの観点からESGスコアの需要を知ろうというものでした。
1)~6)の原則が本当に実施され、促進されるのであればおおよそ上場企業の会計監査と同じ数の調査対象がいるはずです。つまり上場企業全部が調査対象になるという事です。
一方で、私が顧客と捉えているESGスコアの利用者は、主にアクティビストです。機関投資家などです。決してインデックス投資家ではありません。実際にはインデックス投資だけをしている人、というのは少ないと思われますので、顧客数だけで言うのであれば、ほとんどの投資家と見込まれます。
さらには、「3)投資先にESGに関する開示を求める」こちらの実施要領の程度によれば、全ての調査対象が全ての顧客になり得ます。
これには説明が必要でしょう。
ESGスコアでは利用者が欲しいと希望する企業の調査を行う、という流れを取ります。
調査対象企業は、自信があれば宣伝効果を狙えるので協力してくれるでしょうし、協力してくれないのであればその事実をESGスコアとして利用者に報告するだけです。(現状、調査を拒否したという事実を利用者がどう受け取るかは利用者次第、というスタンスです)
ここで、投資してくれている株主から、ESGに関する情報の開示を求められた場合、その企業はどのような行動に出るのか?です。
多くの場合、調査の二度手間を減らそうとするでしょうし、すでに客観的な数字が出ているのであればESGスコアを利用するでしょう。もしかすると調査対象企業がESGスコアを購入し情報開示の材料とするかもしれませんし、開示請求をしてきた株主に「ウチはESGスコアに協力したので、そちらを利用してください」とお願いするかもしれません。
PRIの6つの原則が実施され促進されるのであれば、ESGスコア並びに環境会計などの類似概念の発展に追い風です。
何せ今までは「需要があるの?目的は?意義は?」という話だったのが、(アクティビストにとって)必要不可欠な情報になるかもしれないからです。
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では、私が個人の感想として、そこまで楽観的にみているのかというとそうでもありません。現状のESGやSDGsがファッションになることも想定しておかねばならないと考えています。
それは、今までの環境会計やフィランソロピーが生まれては消え、消えては生まれてきた概念だからです。みんな、生まれた時は「これからは環境だ!」と、PRIに書かれているような文言を掲げて頑張ったはずなのです。
ですが現在、やSDGsを声高に話している人で、どこまでコーポレートシチズンシップを語れる人がいるでしょうか?その他の類似概念を話せる人がいるでしょうか?
これらの概念は、生まれては消え、外側だけ変えて再定義された歴史でもあると私は認識しています。
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というわけで
・PRIが上手くいくのであれば、ESGスコアや類似概念の需要は無数
・今までの類似概念が根付かなかったのに、PRIだけが上手くいくと考えるのは楽観的過ぎるのではないか?
需要を見積もることは、ビジネスとして成り立つかどうかを考える基礎資料です。それがここまでムードに流されるような数字ですと何とも心もとないというのが現在の感想。
一方で、すでに数千社がPRI署名を行っていることも事実であり、お茶を濁す程度であってもESGスコアを使ってもらえるのであれば、大きなチャンスが眠っていると考えます。
ではでは。
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