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組織戦略の考え方、を読むべきだという話

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以前、「わかりやすいマーケティング戦略、を読むべきだという話」にて、戦略論の学者が書いた、マーケティングの教科書を推薦しました。

今回は、同著者が書いた「組織論」の本を紹介します。

組織戦略の考え方です。

 

「戦略論の先生なんだから、戦略に関する本を勧めろよ」そうおっしゃる方もいるかと思いますが、この人が本気で書いた本は、正直、万人向けではありません。

というか、一流の研究者が専門分野で本気で書いた著作は、相手のバックグラウンドを知らずに安易に勧められるものではありません。読み解くのに時間がかかり、コストメリットを考える必要が高いからです。

例えばIFRSの最新動向(会計のお話)を、理学部の大学一年生に勧めるとすれば、それはよほどの理由が必要です。

ブログでは一方通行になります。読んでくださっているあなたのバックグラウンドが、私にはわからないのです。多くの方にお勧めの本を紹介します。

 

さて

本書は三部に分かれます。

1)組織の基本

2)組織の疲労

3)組織の腐り方

 

が、そのまえに、「はじめに」について紹介させてください。

筆者は書きます。

本書は○○○○を前提(左記は買ってお確かめください)としただけでなく、自分で経営するうえで何に気をつけるべきかを留意した。日本の論壇・学者の野党的体質を他山の石とし、主体性をもって「戦略」と、表題につけた。

誠意ある態度ではありませんか、誠意ある題名ではないですか。

初めに、で筆者がいうとおり、ワンステップずつ、筆者の論理の積み重ねを追いつつ、自分の考えを深めていきましょう。

 

1)組織の基本

こちらは著者らしく、基本のおさらいを丁寧に行います。

特に、悪者にされがちな「官僚制」について、その本質を多方面から検証し、基本とします。人材育成の観点からも、カタカナ組織(私が良く言う流行り言葉、ですね)からも官僚制の再確認を行います

ザ・ゴール」という制約条件の理論(TOCと略されることが多いです)に関する読み物を例に出し、ボトルネックに注目することの大切さを説きます。

ここで、そんなのは当たり前だとおっしゃる方が大半だと思います。

では、なぜ、今昔、ボトルネックへの対応を忘れた日常があふれているのでしょうか?

ザ・ゴール」が出版されて何年になるとお考えでしょうか?

それ以前に、TOCという言葉は知らなくとも、概念自体はなんとなく体得している人が大半です。

では、それが機能しないのはなぜなのか。

ここで筆者は意思決定のボトルネックという点からものを見ます。

そこから長期的な劣るネックに話は移り、長期的な具体例として、教育に話が移ります。ここの話の流れが鮮やかですので、ご覧いただければと思います。

組織デザインの点をおさらいに入ります。皆さんご承知の職能制、事業部制、マトリクス組織を取り上げ、構造自体は何も解決しない、解決するのは○○次第と説きます。

(○○が何かは読んでご確認ください)

悩み、やコンフリクト(紛争・葛藤)の面からの考察を行い、問題点を上げます。

この、人の心理面に深く言及している部分が、是非皆様にお勧めしたい点なのです。これを読んでいるあなたが大学生なら今すぐ読むべきです。そして、会社に入ってすぐ、そしてミドルになってすぐに読めば、同じこと思ったとしても、その深さは全く違ったものになります。

次にマズロー欲求段階説ズルい使われ方について解説し、大事な部分はこれだ、と説きます。それよりも大事なもの、大事にしなければならないもの(つまりは大事にされていないもの)について説明し、自己実現」と「みんな頑張った」という言葉への警鐘を鳴らします。

 

2)組織の疲労

上記1)でもかなりハッとする部分があったはずです。

以降は特に学生の方にとっては「そういうことがあるんだ」と、

会社勤めの方(特に大会社)にとっては「そう、そうなんだよ、言語化できなかったけど、それなんだよ!」と胸のつかえがとれること請け合いです。

しかし、私も含めた自分自身がその、何かにならないよう、注意は必要です。

 

まず、フリーライダーについての説明から始まります。

労働組合を具体例とし、フリーライダーがはびこる世界で何が起こるかを考え、次により組織論で大きな役割を果たす「怖い大人」について語ります。最後に筆者のフリーライダー問題の解決法が書いてありますが、ここを読んでいる皆様方なら、それをそのまま鵜呑みになさることはないでしょう。

あなたが考えた解決策は何ですか?

次に1)で出てきた意思決定、決断が取り上げられます。

決断は落としどころではないのです、沈黙していることは「後で自分が結果に対して、安全なところから、サポートをしていた」という自己保身ではないのです。

決断ができない経営者は必要ありませんし、沈黙しているだけなら次から会議に参加する必要がありません。ってか、あなた、後進に道を譲ったらどうですか?安全なところからの後出しじゃんけんなんて誰でもできますよ、卑怯者だという自覚を持つべきです。

上記は私の考えで、筆者の記述ではありませんが、皆さまも似たようなことを思ったことはあるはずです。

では、どのように解決すべきか。

筆者は、まずその兆候を三つ提示します。決断できる人材が不足する兆候が表れた時点で、早期に手を打てばかかるコストが少なくて済むのですね。

次に、ここが本書で「よくぞ斬ってくれた」と皆が思うところだと思うのですが「トラの権力、キツネの権力」というものについて書かれています。別途、厄介者の権力というものもあり、そちらはそちらで非常に厄介だと思うのですが、それ以上にキツネの権力がいやらしい。それに対する対処法と、そうなってしまう論理が書かれます。

さらに、スキャンダルを例に、宦官という奇妙な権力に対する言及を行います。内向きの配慮、内向きの仕事の裏側にある心理に迫ります。特に大企業で社内政治や内向きの仕事、調整につかれた人はご一読をお勧めします。

 

3)組織の腐り方

ここでは組織腐敗のメカニズム、メカニズムという言葉が大仰であるというのなら論理と言いなおしましょう、それが語られます。

「ルールの複雑怪奇化」と「成熟事業部の暇」という二つの視点が紹介されそれらを中心の論が展開していきます。

段落ごとのテーマを見るだけでも切ない。本文を見るともっと切なくなる。

 

最後に

ここはいささか、論理から離れた、情動が動く文章が乗っています。 中身はあえて書きません。決断というものの難しさについて書かれています。

 

 

特に学生の方は、例えば決断不足について、「決めるだけでしょ。簡単じゃん!」なんて言いがちです。実際に働いて、そうですね、今の状況だと2年もするとその難しさに気づき、かつての軽挙な発言を心から恥じるようになると思います。

この本は前述のわかりやすいマーケティング戦略よりも読んでいただきたい本かもしれません。

 

この本は組織論の本です。

会社を中心に語られましたが、応用可能なのはわかりますか?

そうです、国家に対して応用可能なのです。

一回読んだ方はもう一度読んでみてください。今度は会社を国家に置き換えて。

 

沼上先生曰く「君らに買ってもらわなくても、この本は売れている」のだそうです。

リンクから買ってもらえると私に小銭が入ります。

ないよりはうれしいのですが、そんな小銭より、日本にこのロジックを理解し、体得し、実践できる人が増える方が私は嬉しいです。

図書館だろうがブックオフだろうが、なんでも結構です。

是非、読んでみてください。

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