かんがえる、かがんでいる人

考えたことをまとめます。

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積立と一括

金融庁が積立NISAを策定しました。

つみたてNISA実態調査: 3万円超が47%、継続率9割 | トウシル 楽天証券の投資情報メディア

こちらの記事によると、継続率9割という見出しが躍っており、本文では

楽天証券でつみたてNISAを始めた人のうち、2年以上積み立てを継続している人は89%、1年以上積み立てを継続している人は92%にのぼります(2020年5月末時点)

と、金融庁の面目躍如といったところでしょうか。使われているんだなぁ、資産形成に利用されているんだなぁと思います。
しかし、何をもって継続というかを書いていないところが微妙なところです。

三菱UFJ国際投信のインデックスファンド・シリーズ eMAXIS(イーマクシス)

イーマクシス関連のオフィシャルHPをみると、純資産額のグラフが出ています。
コロナショックの時に、大いに減っているのですね。
つまり、解約が1割弱発生している、と。

私は常々、理想的な積立ができる人なんて日本人ではほとんどいないと考えています。

コロナショックで売った人、コロナショック後に戻してほっと一安心して売った人結構いるんじゃないかと思う派です。

 

多分、日本人が投資で資産形成、金融庁の推奨する「長期・積立・分散」を行うには、世代交代が必要なんじゃないかと思います。

地道にそれを続けてきた人が、実際にリタイアする際にそれなりの資産を築いている事、自分の祖父であったり近所のおじちゃん・おばちゃんだったりという身近な存在がそうであることが多分必要だと思うのです。

金融リテラシーって頭でわかってるだけ、テストで良い点数を取れるだけじゃないと思うのですね。積み立てて、売らない、何故ならそういう運用方法を決めたから、それを実行できるところまで含めて金融リテラシーとするのであれば、現状の日本人はいまだに低いと言えると思うのです。現在進行中で鍛えているところだと思うのです。

実際、YOUTUBEやブログで「永久保有だ」「売らない」「徹底した分散」「インデックス最強」と仰っていた方が、どうやら売ったようであったりアクティブファンドを購入したり個別株を物色したり。
別にいいんですよ、どういう投資手法であろうがその人にあっている方法というのはあると思いますから。ただ、解説をするような方が説明と行動が合致していない、言行不一致なのだとすれば「なんだかなぁ?」と思ったりするのです。
モヤモヤモヤン。

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いつも通り、話が横道にそれました。

 

積立と一括の話です。
結論として、理屈では十分分散された投資対象に行うのであれば一括投資が良い、という話しになります。

結論だけ覚えられても、私も困りますし皆さんも面白くないはずです。
なので、いつものようにゆるゆるとプロセスを

 

ウェルスナビさんでこんな記事が出ました。

[動画コラム] 一括投資より、毎月積立が良い? | ロボアドバイザーならWealthNavi(ウェルスナビ)

この記事だけでなく、ウェルスナビさんの記事は一般に質が高いと感じます。ご参考になればと思います。(サービス自体の評価はご自身でなさってください。)

こちらの記事のポイントは
・右肩上がりであれば、一括
・下がって上がる場合は、積立
・積立はリスクを減らすことができる
・株価は今後どうなるのかわからない、だから積立

 

一方で、山崎さんの記事ではこういうものがあります。

意味ある分散・無意味な分散投資とは、投資から人生まで | トウシル 楽天証券の投資情報メディア

アイロニックな表現がそこかしこに出てくる点、文章としては好みが分かれるところでしょう。

しかし、投資を良く知る方の文章として得るものは多く、こちらも是非読まれることをお勧めします。

動画の方がいいでしょうか? 

www.youtube.com

こちらの記事・動画のポイントは、本ブログ記事の文脈からすると
・売買タイミングの分散は無駄(投資対象の分散は有効)
・時間分散(積立)でリスクが減るのは、徐々にリスク(投資金額)を増やしているだけ

これらから山崎さんは「長期・分散・(積立でなく)低コスト」 と仰っています。

 

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これら、一見相反すると思われる二つの記事を、我々はどう捉えればよいのでしょうか?
私の解釈・理解を以下に書きます。ザコい図も使います。

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こちらが積立を行う場合におけるリスク量です。
縦軸に投資家がとっているリスク量、横軸が時の流れ・時間です。
積立でリスクが減るというのは徐々に増やしているという事です。投資をしていない、0円の状態から積立をしてリスクにさらす金額を増やしているということです。
純粋に、少しずつしか投資しないのだから、少しずつしかリスク量(単位:円)は増えず、最終的に投資額が同じになれば背負うリスクは一括投資と同じです。

下記、必要ないかもしれませんが、一括投資の場合のリスク量と時間です。

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真っ暗です、真っ黒です。出す意味合ったかな?とすら思いますが面積的リスク量の違いを把握してください。

最初から全力。
だから、最初からこの金額に対する成長分をリターンとして期待できます。(その分ロスも発生しえます)その分長くお金を働かせることができます。

 

「ロスも発生する可能性があるの?だったら、やっぱり、少しずつ買った方がいいよね?」 

積立は一括投資と同じだけのリスク量を取る時期を遅らせているだけなのですが、このような感想をもつ気持ちも理解できます。
なぜそのような感想をもつのかというと「最初に一括で全力で買った時が高値だったら嫌でしょ!」 ということだと思うのですね。
だから、時期を見計らって投資したい。それが不可能だから積立をする。筋が通る。論理的な帰結である、と。

 

ここで話題を「長期投資か短期投資か」に移します。

おおよそ、世界経済というものは長期で見ると成長しています。

凄くミクロな観点で想像してみてください。何か仕事を任されました。次の日も、その次の日も同じ仕事を任されました。仕事の難易度にもよりますが、一年もたてば最初の一日目よりかなり要領よくこなせるようになっているはずです。最初8時間かかっていた仕事が一年で7時間でこなせるようになった。これらの集積が世界経済の長期的な成長につながります。(この例はシングルループ学習のみですがもちろんダブルも含めイノベーションも起こりつつ世界経済は成長します)

なので、長期で見れば、株価は右肩上がりになるということになります。

ウェルスナビさんがS&P500(配当込)を指標に出しています。そちらから画像を引用します。引用元は先に出したリンク先です。

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このチャートからすると、2012年にまとまったお金を持っていれば、一括で買っておくのが合理的な判断といえます。2012年4月でも1月と同じ、それ以外は高い単価で買うことになるからです。

 

「いやいや、それって結果論でしょ?」

この場合、S&P500なので米国に限られていますから結果論かもしれません。ちょうど右肩上がりになる所を切り取っているのかもしれません。
十分に全世界に分散されている場合、世界は長期的に成長するのだから、やはり最初に一括買いをするのはそれなりの合理性があるんです。世界は、20年30年というスパンで見れば下落はもちろんありますが、右肩上がりになってきまし。(過去の実績の話です)

 

「下がって元に戻るという推移をたどる場合、積立の方が有利でしょ?」

その点、短期的な視点を持つか長期かで結論が変わってくるように思われます。
全世界に分散させようとも、一時的な下落はあるはずです。
だから、たまたま全世界的な下落前に積立を始めた人は、元の値に戻ったときに「ほううら、やっぱり積立の方が儲かるんだよ」と主張するのだと思うのです。

上図、ウェルスナビさんから引用した図の2012年4月をご覧ください。下がっています。この時はギリシア関連のゴタゴタで株価は下落しています。
それを除けば最初に買ったのが安値なわけです。
繰り返しになりますが、普通に図を三年のチャートとしてみるのであれば、「積立か一括かであれば一括だ」という感想をお持ちになるのではないでしょうか?

期間は三年。長期とはとても呼べない年数(だと私は認識しています)です。

 

別角度から理解していただくために、「世界経済の成長」と「投資期間におけるリスク量」の図を書いておきます。

まず、「投資期間におけるリスク量」の観点だけを考えます。

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横軸が時間、縦軸がリスクです。上に振れる場合もあれば下に振れる場合もある、得する場合もあれば損する場合もあるので、上下とも同じだけの傾きです。
そして、リスク量は不確実性の量なので、時の経過とともに増えていきます。
トヨタが明日倒産するとは思いませんが、30年後はどうなっているかわかりません。
つぶれているかもしれないし、世界ブッチギリ一位なのかもしれない。
明日のことは予想しやすく、実現しても影響は相対的に小さくなります。
遠い未来のことは予想しずらく、実現したとき影響は相対的に大きなものになっている可能性が高いです。

言い回しを微妙に変えています。これは明日よりも遠い未来の方が選択肢が多岐にわたるからです。
毎日、+0.1%か-0.1%変化するとします。
明日はどちらに転んでも0.1%の変化しかありません。
遠い未来は、プラスマイナス1.01の日数乗の「可能性」があります。
一方で、全てプラスもなければ全てマイナスというのも考えずらいわけで、確率論と現実に即した値になります。
その値は、おそらく、プラス1.01の日数乗よりも小さく、マイナス1.01の日数乗よりも大きいでしょう。さらに、+0.1%~-0.1%の間に収まる確率も低いと思われます。
なので、明日実現した影響は小さく、遠い未来に実現する影響は大きい可能性が高い、のです。

 

次に、「世界経済の成長」という観点を加えましょう。

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一直線上に年数%成長するという「y=ax」を加えた、と考えてください。
これで、まぁまぁ、長期的全世界分散投資において投資家が背負うリスクを説明できると思います。
損失の可能性はなくならないけれど、世界は長期的に成長するのでリターンを得られる可能性が高い、という結論になります。

 

となると、当然、一括か積立かの結論は一括の方が良いという結論になります。

 

「山崎さん寄りの意見だね?」
そうなのですが、私の理解・解釈ということで、そこはご容赦ください。
逆に、ウェルスナビさんが主張する、積立に有利な「いったん下がってまた持ち直す」というチャート、長期においてありますかね?

積立を20歳から40年計画でやっている人が、20年下がり続けて20年上がり続けるインデックスに対して、積立を続けられるとはどうしても思えないのです。

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ですが。
「一括がいいのでみんなで一括投資をやろう!」とも言い切れませんで。

 

まず、冒頭で書いた通り、日本人の金融リテラシー、行動を伴うリテラシーは成長途上にあると思うのです。
そうなると、いくら全世界分散投資をしていたとしても、短期で売ってしまう可能性を否定できません。
短期で売るのはそれはそれで一つの投資戦略ですので、私が口を出すことではありません。しかし、そうするのであれば、チャートをじっくり読みこんで売買のタイミングを考えなくてはいけません。それを考えず平均的にしたいのであれば積立の方が良いのでしょう。
一年以内でタイミングを見計らう、少しずつ、予算の四分の一ずつ買って二分の一ずつ売る。私はアリだと思います。(買いのタイミングが長いのは、株式は概ね徐々に上がってストンと落ちるからです)

 

次に、すでに疑問をお持ちの方もおいでかと思います。
「一括投資が良いのであれば、金融庁はなぜ積立での制度を用意したのかね??」

つみたてNISA早わかりガイドブック : 金融庁

金融庁のサイトでも注釈がありました。

相場が継続して上昇し続ける場合など、一括投資の方が有利な場合があります。

(文字装飾は私が行いました)
ふむ、金融庁ももちろんわかっている、と。

では、なぜ、積立なのか?

これは、金融庁が制度の対象としている人たちに貯金が無いから、特に若者の貯金が無いからだと思うのです。
一括して1000万円2000万円を投資しようにも、そんなお金はない。特に長期投資を目指すのに、その期間中で積み立てられる金額と同等の一括投資資金を最初に用意できるわけがない。
毎月節約しつつ余剰資金をひねり出して、毎月三万円程度なら投資に回すことができる。

特に積立NISAを必要とする若者世代はそうなんじゃないかと思うのですね。

統計局ホームページ/家計調査報告(貯蓄・負債編)−2019年(令和元年)平均結果−(二人以上の世帯)

 

若いとその後も働いて継続的な収入を期待できるわけですから、リスク許容額はそれなりにあるはずです。しかし、それに見合った現預金はいきなり降ってくるわけではありません。社会人一年目で1000万円持ってるとしたら、、、なんでしょうね?まぁ、一般的ではないでしょう。

だからといって、働いて給料をもらって貯金をしてから一括投資、というのはナンセンスです。

 

そうなるとやることは一つしかありません。

一括投資するだけの資金が無いのだから給料から積み立てるんです。

積立がしやすいように制度を組むのが、政府としてやるべき事だったのだと思います。

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とうわけで、

 

全世界に分散された長期投資を行う場合、理論のみ考慮し、一括投資か積立投資かの二択であれば、一括投資が有利。時間を有効に使えるから。

実際は、一括投資できる分だけ最初に投資をして、毎月の給料から少しずつ積み立てるのが現実的。最初から投資資金を持っている人は、ほぼ、いないから。長期投資で最終的に背負うリスク量と同等の投資資金を最初に用意できる人は、ほぼ、いないから。

 

ではでは。

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