かんがえる、かがんでいる人

考えたことをまとめます。

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ESGを数値化することについて(028)~ファンド組成者はESGを信じているか?~

*いくつかファンドについて言及しますが、それは私がそれらを薦める意図はありません。アフィリエイトでもないので買おうが買わまいが関係ないのです。ご自身の判断で行動してください。

 

企業がESG活動を行ったとして「その評価は何で行うか?」といわれれば、株価だと思うのですね。それだけではないとも思いますが、重要な指標になるという主張に反対する方はおそらくいないと思われます。

ESG活動の評価は株価に現れる、はず。

だから、投資信託ETFでESGをテーマにしたものが組成されているのだと思います。なぜならESG活動によって中長期的に企業業績は伸びると思われるから。

しかし、はたしてどれだけのファンド組成者がその成功を信じているのかは微妙だと私は思うのです。

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多くの方がご存じの通り、ETF投資信託では「信託報酬」という形で料金を設定することが常です。

一方で、最近の流行として成果報酬を標榜しているファンドが増えてきました。

ハイクォーターマークの更新により通常の信託報酬とは別に成果報酬を受け取る、と。

この危険性については

ton96o.hatenablog.com

こちらの過去記事で書いています。

その後に

成果報酬型の商品というだけで安心する人が金融機関の「カモ」な理由 | 山崎元のマルチスコープ | ダイヤモンド・オンライン

成果報酬は金融商品でいうと「コールオプション」と同じ構造だ。コールオプションとは、対象を「将来決められた価格で買う権利」のことだ。

同様の言説があり、私の仮説は他人様に見せられるものだったのだ、とほっとしたのを覚えています。

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結論として、投資信託ETFの報酬形態はどうあるべきか?という話は、バランスや運用者のリスクマネジメントに話題を転換せざるを得ないのですが、殊にアクティブファンドといわれるインデックスファンド以外のファンドにおいては「なぜ成果報酬にしないのだろうか?」という疑問がふつふつと湧いてくるのです。

もちろん、値付けのバランスの問題がありますので、極端な話値上がり分100%を運用者がとってしまうというファンドは買われません。だから投資家の理解を得られるであろうだけの取り分を設定することになります。

本当にそのファンドが伸びると確信をもっているのであれば、すべて成果報酬という商品が出ても良いのではないでしょうか?少なくとも国内で4~5000の投資信託がある中、成果報酬一本に絞ったものが私の知る限り存在ないのは異常とすら思えます。思考が保守的だから今までと似たようなものが乱立する構造なのでしょうか?

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https://susten.jp/

こちらはサステンという、いわゆるロボアドです。完全報酬を謳っています。

SUSTENでの運用にはどのような費用がかかりますか?

こちらによると、受託会社への費用はかかるようです。

費用について

こちらによると、ハイクォーターマークを更新するごとに、12.2%~18.3%の手数料を取られます。(この料率を分数で

成果報酬費用
利益に対して
1.1/6~1.1/9(税別 1/6〜1/9)

と書いてある点には悪意を感じました)

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このように、安いと感じるか高いと感じるかは人それぞれですが、完全成功報酬型というスタイルはできなくはない、と思いますし、挑戦する余地はなくはないと思うのです。

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今度はこちらをご覧ください。

youtu.be

おおぶねという投資信託ではCIO(投資責任者)が、いくらそのファンドに投資しているのかを開示しています。こちらで話者もおっしゃっている通り、日本の会社では珍しいのでしょうし、こういう動画でわざわざ取り上げることがそれをまた証明しているでしょう。

なぜ、他のアクティブファンドではそれをやらないのでしょうか?

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ここから導かれる仮説としては二つあります。

1)これを読んでいる方の予想通り、ファンド組成者は自分たちが儲かりそうなものを組成して、後は「投資は自己責任」と、成果に責任を持つことから逃げている

これは誰でも考えつきますね。投資家が買ってくれれば自分たちは後はそれなりの仕事をするだけで信託報酬がもらえる。

もう一つは

2)ファンド組成者が、「自分を含めたアクティブ投資家が企業のESG活動を正確に評価できず、株価に織り込めない可能性が高い」と考えている

というものになります。

説明します。

 

株価は買うから上がり売るから下がります。何らかのESG活動によって業績が上がるのであれば、そのESG活動のニュースが出れば投資家はやはりプロですので株価に織り込む動きに出ると思うわけです。

ですが、ESGに関しては特にその判断が難しい。

ton96o.hatenablog.com

影響が長期に及ぶかもしれないし効果が出るのが遠い先になるかもしれない(効果が遠い未来なら割引現在価値で現在の株価が動く幅はわずかになる)個別性が高いかもしれないので、自分の調査不足から見込み違いが出てくるかもしれない。

それが自分だけでなく他のアクティブ投資家も同じと考えるのであれば、「ESG活動が中長期的に企業業績を向上させること」は信じるが「自分たちがそれを正確に株価に織り込める能力があるか」は信じていない、という状況が発生します。

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というわけで

・ESGのテーマ型投信やETFに関して、ESG活動の中長期的な企業業績への好影響を信じるなら成果報酬一本でもいいのではないのか?

・投資の責任者がそのファンドにいくら投資しているのか、開示しても良いのではないのか?

・それができず旧態依然としたスタイルを守り続けているのは、ESG活動の中長期的な企業業績への好影響を信じていないからではないのか?口先だけのきれいごとではないのか?

・別の観点では、ESG活動の中長期的な企業業績への好影響を、ある程度正確に株価に織り込む(=ESG活動から理論株価を算出する)理論が必要とされる

・つまり、アクティブ投資家は、ESG活動が企業業績に好影響を及ぼすと信じ切っていないように見える。さらに、ESG活動が株価に具体的にどれだけの影響を与えられるか算出できるか?は信じていないのではないか?

という話でした。

 

ESG活動を株価に織り込めない、という点は投資において実はそれほど重要ではなく、「他のプレイヤーがどの程度の株価を考えているか」が重要だという点はわかっているつもりです。(他のアクティブ投資家より高く買わなければ・安く売らなければ、自分は納得する。説明すべき顧客がいる場合顧客に説明もできる)

ただ、演繹的に考えていくのであれば、そういうプラクティカルな行動に惑わされず、ESG活動の理論株価への影響が必要、とした方がすっきりとまとまるかと考えます。ブラック=ショールズ式のようなものがあれば、多少自分なりにアレンジを加えることはあっても、アクティブ投資家同士の腹の探り合いという寝技は必要ないわけですので。

 

ではでは。

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