かんがえる、かがんでいる人

考えたことをまとめます。

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ESGを数値化することについて(022)~消費者の本音とESGスコアの意義に関する補論~

先日の記事

ton96o.hatenablog.com

では

・結局、投資家は誰もESGを中長期的な利益創発指標として真面目にみていない

・私が想定しているESGスコアはその使われ方に依らず、使いたいときに透明性と客観性がある数値として存在する事が重要

という事を書きました。

 

今回は、また寄り道で恐縮なのですが、企業のステークホルダーとして消費者の実際の行動から、ESGをどのように考えているのかの本音を考えてみたいと思います。存在意義がふわふわしているとそれを前提としたテクニックに意味がないと考えられるのです。

また、本記事は調査や分析をしたものではなく、大いに主観が入っており、想像と誤りが入っているであろうことを先に書いておきます。

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戦略論なんかですとポーターの5フォース分析を持ち出して、新規参入者・売り手・買い手・代替品・競合他社辺りをプレイヤーとして持ち出すところでしょう。

自社が原料を仕入れるのが売り手を考えること、それは買い手に選ばれることの裏返しですので、今回のように消費者(買い手)の本音を考えることで包括されます。

新規参入者も競合他社も、または代替品提供者も、ESGがシェアを取り崩す銀の弾丸になり得るのであればそれを前面に押し出してくるでしょうから、消費者の実際の行動を考えることで包括できると考えます。

(尚、このソーシャルなトピックを売り上げにつなげるという話は、古くはスターバックスフェアトレード、最近だとコンビニのエシカルにみることができるでしょう。)

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次に、消費者の「実際の行動」を考えることについての説明をします。

人間は、意識的にも無意識的にも嘘をつきます。

ton96o.hatenablog.com

「ESGに配慮した商品と、配慮していない商品、あなたはどちらを選びますか?」とテレビか何かでアンケートされたとしましょう。顔も中継されています。

そこで、あえて「配慮されて「いない」」商品を選ぶと答える猛者はいるでしょうか?

私はいないと思うのですね。

では、実際、消費者はそのように行動しているのかというと、はなはだ疑問なのです。

ESGに配慮した商品としていない商品があれば、配慮している方が価格が高くなるのは自明の理。であれば、可処分所得が低い層ほどESGに配慮していない商品を購入する傾向があるという仮説は無茶なことではないと考えます。

 

B2B企業における買い手(消費者)とB2C企業における買い手(消費者)、一般個人ですね、では購買行動に違いがあるのでは?」

確かにそうかもしれません。ですが、精緻なデータを綿密に分析をするというのはここにある時間では難しく、私の脳内の思考実験だけにとどめさせていただきます。なので私の出した結論は間違っている可能性が大いにあります。

中小企業が、それもコロナ禍で余裕がない企業が増えている中、「企業ならお金に余裕もあるでしょ、ESGに配慮した購買活動をしているんじゃない?」と安穏とした仮説は立てることができず、むしろシステマチックに購買の意思決定がなされているからこそ、経営者のESGに関する意識が出やすいのではないかと私は考えます。

そして、企業もその多くは「ESGに配慮された高価な商品」より「ESGに配慮されておらずとも安価な商品」を選ぶのだと思うのです。

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投資の世界で近年「社会インパクト投資」という概念が広まりつつあります。

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これは、投資における「リスク」と「リターン」だけでなく「社会に好影響を与えるものに投資をする」という三つ目の軸を取り入れる投資です。世界的にもその投資規模は増えているそうです。

上記過去記事内で書いている通り、私は「社会インパクトを狙って投資をするのではない。リターンを狙って投資をし、その内容が、より人の役に立つものであればより良い」というスタンスです。おそらく同社に投資をしている方も同じようなスタンスの方が多いのではと思います。新興国にチャンスを与えるからこそリスクは高いが高い成長率の恩恵を受けられる投資としてとらえている、と。

そしてそれはESGに関する購買行動と通じるものがあります。それはすなわち、

「安くていいものを買う。それがESGに一役買っているものであれば尚よろしい」

これが、多くの消費者における本音なのではないかと思うのです。

尚、私が知る限り、個人が社会インパクト投資をできるプラットホームを提供している会社はもう一つありまして

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こちらの会社は現在案件の組成すら行っていないようですし、社長が交代されました。

先述のクラウドクレジットという会社は、投資家に伝えるべき内容を適時適確に伝えておらず、私は金融庁や彼らが所属する一般社団法人第二種金融商品取引業協会に対して苦情を申し上げています。

 

社会インパクト投資は難易度が高いようです。

そして、難易度が高いからこそ意義があるとは必ずしも言えない、と私は考えます。投資家に対して大事な情報を伝えず嘘をつかなければ立ち行かないようなビジネスであればつぶれたほうが世の中の為だと思うのです。

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同様に、ESGに配慮した商品もそれがビジネスとして成立するには相対的に難易度が高いはずです。コストもかかるはずです。程度の問題になりますが、そのコストが吸収できなければ消費者に購入されることは少なくなるのは必然です。であれば、抽象的な言い方になりますが、ESGに特化した商品を作るよりも「そういう風味」の商品の方が受け入れられやすいはずです。主に価格的に。

 

消費者の購買行動は、それにより財やサービスを手に入れるとともに経験価値を伴います。今までにない高価なもの、不動産や新車などを購入する場合、その値段の財を手に入れるというだけでなく、「高価な商品を購入した」という経験価値も買っています。家を購入した場合、ローンの重圧もあるでしょうし「これで一人前」と感慨深くなる人もいるでしょう。(時代的にそういう人が減っているのは知っています、が、いるんですよ、いまだに)

ESGに特化した商品であれ、ESG風味の商品であれ、ESGに意識が向いている消費者であれば経験価値という点ではあまり違いがないのではないかと考えます。

つまり、どちらでも「他の配慮されていない商品よりもこの商品を選ぶことで、少しでも私は社会に貢献している」という満足感を消費者は得られるという事です。

そうなると、本格的なESGに配慮した商品は価格の面で分が悪いと思うのですね。

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消費者の購買行動において、他に考えられることは無いか?

もちろんあります。特にB2Bにおいて、です。

B2Bにおける売買は、その場で現金決済ではなく主に「掛け」で行われます。借金です。売掛金や買掛金が発生します。そうなると必然的に「取引相手は大丈夫な企業なのか?」という信用情報の調査が入ります。

ここに、ESGの観点が入る余地があると考えられなくはありません。

それは「A社は安いがESGの観点が抜けている、B社は比較すると高いがESGに高い意識を持っており実践している。取引するのはB社にする」という塩梅です。

 

私はこれが、特に日本の企業数の大部分を占める中小零細企業において、成立するとはとても思えません。

 

それがB2Cビジネスになるとなおさらです。多くの消費者はその企業のESG情報に関して知らないし調べることもしないでしょう。自分で開示情報を調べるよりも、TVCMやYOUTUBEの宣伝によるプロモーションに流されることが多いでしょうし、そもそもコンビニなどで購入する食料品ですと「CMでESGに力を入れているといっていたから」ですらなく「近いから」そのコンビニを選んでいることが多いと思うのです。このコンビニのこの商品だから買う、なんてあまりありません。だからこそヒット作が生まれればネットニュースで取り上げられたりするわけです。

コモディティにおいては、日常生活になじんでおり生活費の大部分を占めるからこそ、ESGの観点でなく価格で決まりやすいのではないかと思われます。

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以上

・先日は投資家の本音としてのESG、今回は消費者の本音としてのESGを考えた

・ESGへの注力が消費者の購買行動に現れるはずだから、他の競争者の事を考えずともまずは消費者(買い手)の立場を分析すれば用をなす

・人は、その言っている事ではなく行動で本音を分析すべき

・それは買い手としての企業であっても個人としての消費者であっても同じ

・ESGに配慮されたものを買うのは気分がいいが、それはおそらく買い手に価格以上の影響を与えることは、現時点では、ない。配慮されていれば嬉しいというオマケ

・取引相手として選定される場合においても、ESGに配慮しているからこそ選定されると考えるのは楽観的なのではないか?

 

という結論です。

ESGスコアを作る側としては、消費行動に(特にB2Cで)それが結びつくことは少ないと思われます。あくまで利用者は企業であり、それこそまさに信用調査の評点のように使われる未来を見据えます。現時点では、取引相手の選定にESGが使われておらずとも、まずはGの点でそしてEやSが選定に加わる未来は想像できます。その際にどういう企業を取引相手に選定したいのか、各企業がESGを使いこなすだけの企業像を描いておくことが重要なことだと思うのです。(人材採用において採用人物像を描くことが大事なのと同様です)

 

今日はこの辺で、ではでは。

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