かんがえる、かがんでいる人

考えたことをまとめます。

ICOとそれに伴う会計処理について考えた

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企業保有の仮想通貨に対する会計基準について考えた
企業発行の独自トークンに対する会計基準について考えた」と
仮想通貨関連の企業における会計処理を考えてきました。
そして「ICOの活用方法を考えた~2018年春~」では、私のICOに対する考え方をお伝えしました。
現状では、ICOは大企業が新規事業の進出に使う、これが結論でした。
今回は、まだ決まっていない事で重要な「ICOにおける会計処理」について考えます。
まず具体例を挙げて、新規事業を想定し、それに対する会計処理(具体的な仕訳)を考えます。

 

今回は不動産業界における、新規事業を考えます、
なぜ不動産業界を選んだか?
ブロックチェーンの使い方」で書きました通り、
ブロックチェーンの使い道は(程度の問題はありますが)高価値なデータを乗せ、改ざん不能という性質を利用して、利害関係者が複数存在する用途に利用されるのが良さそうだ、と考えています。
そう考えると不動産はふさわしい。また、賃貸・持ち家に関わらず、皆様方がイメージしやすい。さらに「不動産業界周辺について考えた~2018年~」で書きましたように、不動産関連は既存のビジネスに関して頭打ち、新しい事業に進出していく傾向があります。
つまり、ここで書いた新規事業が絵空事ではなく、明日の不動産業界に取り入れられるかもしれないのです。

 

不動産ディベロッパーで、次のようなサービスを新規事業として立ち上げましょう。
土地、建物の収益性を評価するサービス」です。
不動産鑑定士というのがいたはずでしょ?それでいいじゃない

というツッコミがありそうです。確かにその通りです。
不動産鑑定士の鑑定評価は公正・公平・適正を求められ、説明責任が課されます。それだけ権威がある鑑定評価なのですね。
しかし、不動産の値付け自体は誰が行ってもいいものです。
特に小売業の分野では不動産の鑑定に強みを持つ企業も多く、出店に利用しています。これは、それらの企業ノウハウを買うことができる可能性があるとともに、不動産鑑定はノウハウとして蓄積できるものである事を示しています。(現実的にはコアノウハウなので買う事はできそうにありませんが。)
さて、ある土地を鑑定評価するとします。まず最初に確認することは何でしょうか?
私なら目的、利用方法を確認します。農地なのか、集合住宅なのか、小売店なのか。

建物であっても同様です。学生向けの賃貸にするのか、リフォームして事務所として貸し出すのか。その目的によって価値は大きく変わると考えています。
目的ごとに鑑定を緻密に行うとなると、各分野の専門家が必要です。
例えば農地の鑑定でしたら地元の農家の方のノウハウを生かせるかもしれません。賃貸の鑑定でしたらそこに根付いている不動産屋の方のノウハウが生かせるかもしれません。特に、地方で不動産鑑定士になった方は、新しい飯のタネを探しているはずです。サービスに乗ってくれるかもしれません。

 

不動産ディベロッパーで収益性を評価して、自分でため込んでおけばいいじゃない?
それも一つの方法です。
不動産ディベロッパーの本業がオフィスビルの賃貸であるとはいえ、すべての不動産を購入できるわけではありません。ノウハウはノウハウとして会社に残しておき、良いものは自社で買うとしても、そのノウハウを売ることができればさらなる収益を生むことができます。
価格が下落するものを顧客に売り、上がるものを自社で買うという思想とは相いれません。あくまで適正な評価額をサービスとして提示します。
一番大きな「信用」をなくすような業者は消えるべきです。

 

スマコンを利用し、独自トークン内に、不動産基本情報利用法別の評価価格評価をした評価者情報とこれまでの評価履歴および評判を記録する。
利用者は独自トークンを用いて公正な記録内容を閲覧可能になるだけでなく、評価者の評価を行うことができる。
インターフェイスや、重み付けの細かなロジック問題は残存していますが、特徴と顧客に対するメリットのまとめです。

現状、DAppsには仮想通貨交換業が必要なようですが、今回のICOでの会計を考えるにあたって、そこは考慮外としました。

DAICOも考慮外です。

 

 

次に独自トークンの設計に入りましょう。
企業発行の独自トークンに対する会計基準について考えた」では未払金、株式(優先株)、前受金の処理を考えました。
負債に入るのか純資産に入るのかが、財務諸表上、重要でした。
上記で負債に入らないのは株式(優先株)ですが、世界統一の会計処理(IFRS)では株式(優先株)は負債に入ります。
財務諸表の作成基準は、世界統一の会計処理(IFRS)へ移行しつつあります。(海外の投資家が日本企業の財務を理解できるように)また、中国の方が日本の土地を購入するなど、不動産の国際的な流れもあります。ですので、独自トークンを発行すると負債が増えるもの、と結論付けられそうです。

しかし、本当にそれでよいでしょうか?

ここで私はあえて、純資産に乗せる処理を採用したいと考えます。

私は、ICOの根本的な目的は、トークンを利用とした資金調達を行い事業を推進するものと認識しています。発行されたトークンが市場に出回り、企業がICOで調達した資金を返済する義務がないのであれば、純資産に乗せるべきだと考えます。

ICOで調達した資金は純資産にすることにします。


トークンの類型としては
A)デジタル通貨型
B)会員権型
C)配当型
D)利用料型
E)ブロックチェーンアセット型
があるのでした。
サービスとしては会員権型、もしくは利用料型がしっくりきます。
ポイント型は考えずらいです。
ポイント型は、提供する財・サービスが多種に及ぶときに威力を発揮します。
小売店が商品全般をトークン建てで提供している場合に、どれにでも使えるというイメージです。ある商品はトークンで買うと半額です、とか。潜在需要を掘り起こすと思います。
今回は「この〇〇を□□として利用するとき、いくらか知りたい」という、一つだけのサービスなので、わざわざポイント型にこだわる必要がありません。
次に、会員権型か利用料型ですが、極論どちらでもいいと考えています。違いとしては利用料型にすると使った分減ります。会員権型ですとずっと手元に残ります。また、会員権型ですと別途利用時に利用料を払う必要があります。
会員権型の方が、将来のキャピタルゲインを狙う設計と言えるでしょう。
今は、現状のICOについて考えているので、投機性はなるべくなくした方が良いでしょうか?VALUをお考え下さい。彼らは金融庁に足を何度も運んでサービスをローンチさせました。つまり今のVALUは先例として有効なのです。

一方で、せっかく仮想通貨を利用しているのに、利用時に別途利用料を払うのは煩雑であるという意見も尤もです。

ですので、トークンを利用料型で発行することにします。

利用料型であってもトークンの価値が上がればキャピタルゲインは狙えます。

何より、運用の簡便さが大きなメリットになります。

 

次にプルーフの設計を考えます。
PoWやPoSの「P」です。
他にも派生はいろいろとありますが、ここではPoWとPoS二つに絞り、その特性を考えましょう。
簡単に言ってしまうと、プルーフは処理内容・データ内容が正しいことの証明です。
PoWとPoSの違いは、だれが証明をするのか、です。
PoWはマイニング(演算処理)した人が、PoSはトークンを多く持っている人が証明をします。
今回の記事のペルソナ(事例モデル)は信用がある大企業、不動産業なので、かなり保守的だと思われます。
なので、PoSを使って、発行量の過半数を自社が持つことでハンドルを会社が握る事にします。発行当初は会社がトークンの大部分を所有することにしましょう。

 

さて、ここからは仕訳を書いていきます。
会計学はどうあるべきかを考える学問です。
簿記は決まっている処理を自由に扱う技術です。
ここからは簿記の話も加わります。簿記に興味がない人はごめんなさい、我慢してください。そのうち簿記の記事も書きます。基礎的な話として、貸方借方と出てきますが。貸方は右側、借方は左側という意味合いです。

(参照:ストックとは?フローとは?


実は問題が生じました。どういう仕訳を切ればいいのかがわからないところがあるのです。
どこでどういう問題が生じ結論が出せなかったのか、を開示する意味はあると思うので書きます。

 

トークン自体は運用の設計であり、ソフトウェアです。
自社がトークンの過半を持つことにしましたがそれは運用上の理由からであって、自社利用のソフトウェアではありません。
トークン作成研究開発費 ○○円 /現金 ○○円
金額は実際にかかった費用。問題ないですね。

(作成費用全体を繰延資産として、トークン発行時に貸方にし、発行時に独自トークンの原価とする案も考えたのですが、商法との兼ね合いでやめておきました。株式交付費に倣ってもいいのですが、費用化してしまった方が保守性の原則から言ってベターなのかと。しかし、長期、一年を超えて研究開発が行われる場合は、下記、トークン発行時の仕訳も含めて改善する余地があります。)

 

次が問題です。
トークンを発行します。
・独自トークン  ○○円 /?????????
貸方に何を持ってくるのか、金額は何を使えばいいのかがわからないのです。
借方は資産としての独自トークンでよいかと思います。企業の営業において費消され、物量的に把握できる(N枚)ので棚卸資産になると思います。
独自トークンの価額ですから、独自トークンが何でできているのかを考えれば決まりそうな気がします。
私は「インフラとしての仮想通貨」にて
仮想通貨のファンダメンタル的な要素は、「技術」「マーケティング」「コミュニティ」としています。
今回でいうと、独自トークンの開発技術とアイデアが技術、広告費に代表される人件費及び一般管理費マーケティング、会社の信用がコミュニティになります。(発行したてなので)
会計ではだれが処理をしても同じ金額にならなければなりません。

例えば、会社の信用に価値がある事を反対する人はないでしょう。
しかし、誰もが同じ金額を算出するかというとそうでもないはずです。羽柴さんは100万円、松平さんは50万円と評価する。会計の世界でこれは困るのです。
なのでこのようにしました。
・独自トークン  ○○円 /トークン作成研究開発費 □□円
             トークン作成広告宣伝費 △△円
             トークン作成人件費   ●●円

金額は実際にかかった算定可能なものです。それで独自トークンの原価を構成します。
トークン作成要素はすべて費用のマイナスとします。

これは、材料が無償提供され、それを加工した場合の棚卸資産に倣いました。

 

次、顧客にトークンを発行します。

ここではICOをします。対価として現金が入ってくるか、ETHあたりの仮想通貨が入ってくることが想定されます。
現金だとそのICOは「投資」とされ、ややこしいことになる恐れが高くなります。ETHで集めましょう
・有価証券  ○○円 /独自トークン      □□円
           独自トークン払込剰余金 △△円
発行する独自トークンの原価より、受け取るETHの方が価額が大きいはずなのでそれを純資産に持ってくる仕訳を例示しました。
上記、有価証券(仮想通貨であるETH)は売却され、サービスのための資金となるでしょう。
・現金 ○○円 /有価証券    □□円
        有価証券売却益 △△円

 

顧客がサービスの利用をしました。
今回は利用料型なので
・独自トークン ○○円 /売上 ○○円
利用料がすなわち売上になるので、上記仕訳になります。○○円は時価です。
独自トークンが上場している仮想通貨取引所で受け取り時点以降24時間の出来高で加重平均したの価格、あたりが現実的だと思います。法定通貨またはペッグ仮想通貨への換金を念頭に置いているからです。
ICO銘柄だと上場していないことが想定されます。その場合時価が算定できないので問題です。
借方の○○円を、発行時に交換したETHの価額を発行枚数で割った値を一枚当たりの原価とするしかありませんね。
例えば、ETH10万円の時に1ETH1と100トークン交換、ETH9万円の時に2ETH1と200トークン交換したとすると1トークン当たり933と3分の1円です。
利用時に3トークン利用したとすると2800円になります。

別の理屈として、
時価が存在する利用料型の場合には以下のような仕訳も考えられます。
・独自トークン ○○円 /売上        □□円
            独自トークン評価益 △△円
独自トークンの受け入れを時価、売上を独自トークンの原価(上記でいう1トークン当たり933と3分の1円)で考え、別途評価益を算出する方法です。
これは収益を売上と営業外損益で分けたいときに機能するかもしれません。
しかし、考えを進めるうちに売上と独自トークン評価益は同じ性質なのではないかという考えに至りました。
ここでいう売上が、新サービスということもあり営業外収益に当たるのであればそれに対応した勘定名をつければいいだけの話。
私の意見として利用料型の場合は
・独自トークン ○○円 /売上 ○○円
という仕訳で結論づけます。

尚、会員権型の場合、利用時には別途利用料を払うとします。逆に言えばトークンがなければ利用料を払う事すらできません。
・現金 ○○円 /売上 ○○円

 

評価者が不動産を評価してくれた時、会社はどのような仕訳を切るべきでしょうか。
これも、また、論点なのです。

具体的には評価のお礼として独自トークンの付与をする(インセンティブ)として
・????????/独自トークン ○○円
になりますが、借方が決まりません。
サービスの原価を作っているので借方も独自トークンとしたいところです。

分けて考えましょう。

一段階目の仕訳として

・独自トークン  ○○円 /トークンデータ入力未払金 □□円

としましょうか。これは、不動産評価者が不動産評価データを乗せる事で独自トークンの価値が増した(=枚数は変わらず裏付けの原価が上がった)事を意味します。

貸方は、お礼を差し上げなくてはならないものとして負債です。

二段階目として、独自トークンを付与します。

・???????? /独自トークン  ○○円

資産が貸方に来るということは資産は変質する、もしくは、費用が発生することが多いです。一段階目と二段階目を合わせれば、不動産評価データ書き込み時の会社側仕訳が完成します。

二段階目の借方は何にしましょう?

 考えあぐねた末に、「独自トークンの価値を上げた対価として、独自トークンを付与する」という実態を反映し仕訳で表現することにしました。

トークンデータ入力未払金 □□円 /独自トークン  □□円

                   受取手数料   △△円

ここで、○○円だとイメージしずらいので、より具体的な数値を出します。

当初、独自トークン価額が500000円、100枚あるとします。単価が5000円。

評価情報付与を50000円の価値とします。この時点で、独自トークン価額が550000円、枚数は100枚で変わらず、単価が5500円。

評価者にトークンを発行。5枚対価として発行したとします。独自トークン枚数が95枚になり、単価は変わらず5500円。結果、独自トークン価額は522500円。

・独自トークン  50000円 /トークンデータ入力未払金 50000円

トークンデータ入力未払金 50000円 /独自トークン  27500円

                     受取手数料   27500円

 合わせると

・独自トークン  27500円 /受取手数料 27500円

今回の設計では、不動産評価時の評価者への対価は価値に対して低いもの、つまりは会社に収益が発生するものとしました。逆にコストが発生することも考えられますが、運営費用・運営リスクを考えると徒に収益を低下させるべきではないと考えます。

コストが発生する場合、対価のトークンを5枚でなく10枚支払ったとします。すると以下のような仕訳になりますね。

・支払手数料 5000円 /独自トークン 5000円

 どちらであっても、単価は増加し、枚数は減ります。

つまり独自トークンの価値は増加し、独自トークンは評価者に付与されたことを表します。

利用者が評価者に対して評価をした場合も同様です。

総じて、「評価情報付与の値付けをいくらにするのか」「インセンティブ付与時に収益を上げるか費用として甘受するのか」という設計が全てで、評価情報に対する値付けの客観性が論点になることが考えられます。そこが客観性が不足しているため認識できないものとされると、上記の仕訳は崩れます。その場合、独自トークンの価額変動は起きず、そのままの単価で授受が行われることになります。

この場合の仕訳は

・独自トークン  ○○円 /独自トークン ○○円

なので、結果として仕訳無し、です。

会社保有トークンの単価は増加し、枚数は減ります。

 

PoSによる独自トークン取得時はどうしましょうか。

枚数が増えるので借方は独自トークンで良さそうです。信頼性付与の対価として、独自トークンを取得したので

・独自トークン  ○○円 /トークンデータ保証負債 □□円

金額はその時点の時価(何の時価かは上述の通り)もしくは、会社の貸借対照表上で認識している単価。

 でよいでしょうか?

しかし、これではどんどん負債が増えていってしまいます。

独自トークンを取得した企業も同様の処理を行うはずなので、これはまずいです。

・独自トークン  ○○円 /トークンデータ保証益 □□円

貸方を負債ではなく収益としました。

PoSによる独自トークンの取得は原価0円での収益とする。

預貯金に対する利息と捉えると、イメージしやすい考え方です。

では、純粋に枚数が増えただけと捉える場合どうなるか?

仕訳はないと考えます。

独自トークンの保有枚数を書き換えるだけです。

個人的に仮想通貨と接して「PoSはデータ保証の対価であり利息である」と言われればそうですし、「ソフトウェアが自動でデータ保証している・枚数が増えるのは、ただ独自トークンを持っているからにすぎない。収益として計上するのはおかしい」と言われれば、これもまた納得できます。

企業保有の仮想通貨に対する会計基準について考えた」では原価0円の仕入として考えました。それを踏襲し、仕訳無し、保有枚数のみを増やす、とします。


トークンをBURN(株式償還みたいなものです)した場合は
・独自トークン払込剰余金 ○○円 /独自トークン ○○円

 でいかがでしょうか?

トークンをBURNする前の買い付け

・独自トークン  ○○円 /現金 ○○円

でいいですね。

 

今回の記事では、身近な例として不動産業界を取り上げ、そこで考えられる新しいサービスを取り上げました。不動産の用途に応じた値付けサービスです。データは貴重で利害関係者は複数、ブロックチェーンに乗せる意味はあるかと思います。

そして、考えられる一連の業務を分解し、それぞれに対して仕訳を考えました。

考えが及んでいない部分や、私自身が論点として認識している部分のご意見はあるかと思います。

Twitterやコメントでご意見を頂ければ嬉しいです。

Twitter @ton960

 

尚、仮想通貨関連ではこのような事も起こっています。

原価が高い、赤字の売り上げになりますよね。

 

参考
 EDINET
 2018年度版業界地図

 会計法規集

 日本不動産鑑定士協会連合会
 不動産鑑定評価を考える
 DIAMOND online
 ZUU online
 Business Journal