かんがえる、かがんでいる人

考えたことをまとめます。

SLが社債として機能したときに起こりうる現象について考えた

 

ton96o.hatenablog.com

 

こちらの続きのような話になります。

上記過去記事とは観点を変えて、簡易的な社債としてのSLを企業が利用するとどうなるのかな?と考えてみます。

尚、上記「入門者のための社債発行実務」という本を 参照しました。

業務フローや手数料など、知らないことがたくさんありましたので、門外漢の方でも概要を把握するのによいと思います。

2019/04/20現在、unlimitedで読めます。

 

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さて。

社債としてのSLを企業が利用した場合、

1)簡便的である

2)まだ不確実性が大きい

3)リスクマネーの迅速な調達が期待できる

という点があげられるように思います。

 

説明します。

1)簡便的である

社債はすでにいろいろな規制が入っていますので、発行にかかわる付随業務も多く、さらには手数料もかかります。時間・金額の面で高コストです。

一方で利率の面で考えるとSLよりは低利率で調達できることが期待されやすいように思います。

歯切れの悪い言い方をしています。

これは、FUNDsさんのアイフル案件を見ているからです。1.8%の利率でした、

ググって最初に出てくる社債を参照すると

https://www.nomura.co.jp/retail/bond/f_currency/pdf/20190402_1.pdf

(PDF注意)

ソフトバンク無担保社債で、利率は1.64%、6年。

ソフトバンクさんは、教科書通りのファイナンスをしないことで有名ですので、比較対象にするには説得力に欠けるかもしれません。が、一つの実例として、SLの方が社債より利率が高いと言い切れない、とはいえると思います。

 

2)まだ不確実性が大きい

不確実性は、借り手・貸し手、さらには中間業者それぞれにおいて残存しています。

一方で、荒れ地の状況で借りては返す実績がある企業、となっておくと、貸し手市場からそれなりの信用が得られるかもしれません。

得られる「かも」と書いたのは、得られないかもしれないからです。

対象の借り手に対するイメージに大きく左右されるのですが、同じ条件の案件を組成しても

「ここなら何回も償還実績があるので良いぞ」

と考える人もいれば

「ここは何回も借りているので危ないぞ」

と考える人もいて当然なのですね。

それゆえに、借り手としては懇切丁寧な説明が必要だと思われます。

IRならぬLR(Lender Relations)でしょうか。

例えば、季節変動が大きい会社で、毎年夏になると売掛金の回収が遅れて運転資金が心もとなくなる。だから、毎年この時期は不慮の事故に備えて、キャッシュを借りておく。

こんな場合なら安心してSLとして貸出案件を組成できます。

なぜ銀行で借りないのか?

キャッシュの必要性に迫られていれば、時間がかからない方を選ぶでしょう。

信用ができ、銀行から融資がされるようになれば当然借り手は利率が低いことが予想される銀行から融資を受けるようになると思います。

SL市場での返済実績は、銀行の融資判断の一助となるのではないかなぁ?なんて思います。

 

3)リスクマネーの迅速な調達が期待できる

内部留保、という言葉があります。

労働分配率が低かったり、キャッシュ・リッチといえば言葉は良いのですが、要はなんの使いでもない現金を社内にため込んでいる状況を揶揄する文脈で使われることが多いようです。

だから、従業員の給料も株主の配当も上がらない、設備投資すらされない。

お金がないから消費が増えず、景気が良くならない、と。

 

ある程度のフリーキャッシュフローの必要性は否定しませんが、バランスが大事で、そのバランスは個々の企業で事情が違うので一般的なことは言いずらいと思うのですね。

ある程度一般的なことを言えるとすれば、企業のリスク選考度が相当に下がっているということです。

 

銀行の融資は、晴れの日に傘を貸して雨の日に傘を取り上げる、なんて言われます。

自社の景気がいい時には「金を借りてくれ」といい、少しやばくなると「返せ」となる。

企業経営者であれば、安心して借りることなどできません。

だから、社内に現金やそれに近い現金同等物をためておき、自社やその経済圏で賄おうとしているというのが私の理解です。

持ち株会社化というのが、昔、流行ったようですが、それに近い状況に戻りつつある、と。

 

必要性があるので、その形態自体は非難するに当たらないと考えています。

問題視するのであれば、必要があるときに返済能力がある借り手に資金が融通されない状況だと。

 

現状のSLはある程度リスクが高いという点は、多くの貸し手が理解しているところだろうと思います。

匿名組合型の情報開示が進んでいることは私は手放しでは喜べませんが、貸し手にとっては朗報でしょう。

名前を表に出せる企業が、こういうことのために資金調達をします、と表明し、賛同する貸し手が資金を出す。 

 不良債権を慎重に避けている銀行の隙間をつき、SLに比べ多くのコストがかかる社債の間を取る、現在の日本社会に必要とされる役割なのではないかなぁ?と思います。

 

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では、そのSLからの融資がメジャーになるまでの間に起こることは何でしょうか?

 

まずは、借り手のマーケティング力向上です。 

上記で

IRならぬLR(Lender Relations)でしょうか。

 と書きましたが、同義です。

SLは基本的に、貸し手の立場からすると小額からの投資ができることが魅力です。

それは、借り手は多数の貸し手から資金を調達しなければならないことを意味します。

企業が個人にPR活動を行う行動ー陳腐な具体例ですがSNSの利用ーは促進されるでしょう。

逆に言えば、SLで想定される借り手になる企業は、たとえB2Bの企業であっても、消費者ではない個人へのマーケティングが必要になります。

自社はどういう存在で、今は何をしようとしており、資金が必要かを説明する能力の向上が見込まれるように思います。

もちろん、社名や資金使途を明らかにするとライバル企業に戦略が丸見えになります。

その辺りの情報開示はやはり程度の問題になります。

貸し手とすれば、担保がしっかりしており、利率をしっかり取れればそれでいいという人が多そうなので、どの事業に投資をするのかは関係無いのかもしれません。

あとは個人的に微妙に気になる点として、デフォルトが起こったときに、貸し手が借り手企業に乗り込んでしまうという事件が起こらないとも限りません。

普通、借金をするときには、その額や借金をした事実は貸金業を持ってる業者しか知らないはずですので、そのあたりの情報開示で、さらなる揺り戻しがありそうです。

尚、私は、社名の開示がされることは大変有益ですが、開示がされない案件があってもいいと思う派です。

資金調達先が社運を賭けたビッグプロジェクトなら、それを社外に漏らすわけにはいかないでしょうし、中間業者の審査がしっかりしていればそれはそれでいい。

そもそも貸し手の多くは、自分のお金が利息が付いてちゃんと返済されればそれでいいと考えているように思うからです。(それを金に汚いという気は全くありません。むしろそのぐらいの方がいいとさえ思います。)

尚、匿名で募集すると、当然、「ちゃんと返済をする企業」 という情報は公に認知されません。

 

 

次は、中間業者の資金調達力による淘汰進展です。

SLを利用する借り手が期待するのは、短期間でそれなりの金額を調達できること

利息が低ければさらに良いでしょう。

これは、中間業者の貸し手に対するブランドに大いに依拠します。

「○○が組成した案件だから、N%の利率だがそれだけ固い案件だろう。」

投資を実行する際に大きな判断材料になると思うのですね。

現状、雨後の筍とまではいきませんが、ぼちぼちとSL事業者は増えています。

ガラガラポンが起きても不思議ではありません。

尚、私はSL案件において事故が0というのは、逆に怖いのです。

理由は二つあります。

1:事故が起きた時の対処能力が図れない

2:限界よりさらに手前での利率案件のみを組成している

事が想定されるからです。

1の説明は不要でしょう。2は見解が分かれるかもしれません。

お金のことですので、事故=0にこだわる方がよいのかもしれません。

医療の現場で、チャレンジされても困るのと同様、金融商品でチャレンジされても困るという方がほとんどでしょう。

しかし、大きな金融という視点で見ると、高リスクだが高利率でお金を回すという案件が組成されてもいいように思うのですね。

再度、医療に具体例を移すのであれば、現在われわれが受けられる高度な医療技術は、どれもが最初はチャレンジだったはずです。中には発案した医師自身が自分の体を使ってその治療方法の実効性を証明したものもあります。

何が当たるのかわからない、不確実性が高まったといわれる現状。

SLは、ベンチャー企業の、特にスタートアップの貴重な資金調達手段となることも想定されます。

そこまでSLが発達し、借り手が貸し手にきちんと説明し納得してもらえれば資金調達が可能という時代が来るのであれば、内部留保は外圧によって下がり(自然には下がらないと思います)少しでも景気が良くなるんじゃないかなぁ?なんて思います。

 

 

最後に、貸し手の投資リテラシー向上です。

約手を担保に取るのはどういう意味か、LLPを連帯保証人にとるとはどういう意味かなど、どこまでの方が理解しているのでしょうか?

わからない場合、わからないという理由でどれだけの人が投資を控えられるでしょうか?

貸し手個人が投資リテラシーを向上するだろうと考えると同時に、どうしても投資の勉強などしたくないという方は実際にいるので、格付け機関のようなそういうサービスが出てくるようにも思えます。

本来であれば中間業者が、その名をもって一定程度の安全性を担保する、という状況が理想ではあります。

多くの詐欺まがいの業者が酷いことをした(し続けている?)歴史がありますが「あんな高金利に飛びつく方が悪い」というご意見もごもっとも。

投資教育産業が多少なりとも出てくるのではないかなぁ?と考えます。 

 

まとめます。

企業がSLを利用して資金調達をするとなると

・企業の個人(多数の貸し手)に対するマーケティング能力が重要になる

・情報開示のバランスが大事になる

・状況によっては、SLを通じて企業が信用力を高められる

・中間事業者の選別が重要になり、中間事業者の勝ち組・負け組が明確化する

リスクマネーの循環が促進される

・投資教育の発展が期待される

・景気が向上するといいな、と思います

 

さらば銀行、というご意見もありますが、私はいろいろな資金調達手段があっていいと思う派です。

 

まだまだあったようにも思いますが、今日はこの辺で。

(思い出したらツイッターに書くかもしれません)

ではでは。

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