かんがえる、かがんでいる人

考えたことをまとめます。

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ESGを数値化することについて(008)~利用者を考える~

ESGを数値化したものを、今後、当ブログではESGスコアと呼ぶことにします。

今回は、ESGスコアと利用者の関係について考えたいと思います。

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まず一般に。

何らかの財・サービスは利用者の役に立つために存在します。おなかがすいた人には多少味が落ちてもボリュームたっぷりの食事が適切でしょうし、何かのイベントではムードのあるレストランで高級な特別感のある食事が向いているでしょう。

このように、何らかの財・サービスは利用者の役に立つために、それを必要としてくれる人の属性と理由を知っておく必要があります。それはしばしば供給する側からコントロールされ、それはターゲティングと言われます。

例えば、高級なアクセサリーの購入はそれ自体が経験価値であり自尊心を満たす行為です。自分は他とは違うという優越感を満たします。安っぽい服装のモッサリした客が他にいてはその雰囲気を壊します。だからターゲティングの結果、間違った顧客(対価を知らうなら顧客なのでしょうが今回の場合、アクセサリーの購入という行動における価値を毀損するので顧客もしくは潜在顧客というにはふさわしくないかもしれません)が入ってくることのない店構えにするなど、住み分けに工夫しさえします。

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だから、ESGスコアも利用者の事を考えておく必要があります。

利用者が「本質的に地球環境にどれだけ影響があるのか、温暖化にどれだけ影響しているのかはどうでもいい。とにかく脱カーボン、ネットゼロカーボンの情報が欲しい」と切望するのであればそれを要素として入れざるを得ない、というのが私のバランス感覚です。

そもそも私はESGスコアを

ton96o.hatenablog.com

・総合的な判断は利用者に任せるのが良いと信じる。格付けを出すのではなく、どういう観点の情報をどういうプロセスで評価して何点と算出したかを明らかにする。その個別観点別の数値を提供してESG評価の数値化とする

このような使い方を念頭に置いて考えてきています。

Eの観点のゼロカーボンという構成要素は、現在の世情から言って外せない要素となるでしょう。

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これらから言えるのは、ESGスコアそのものですらSという概念を意識せねばならないという事です。

社会的要請、利用者の要望に基づいて役に立つように設計し作成するべきであり、何らかの意思決定などに資することが存在意義だからです。

 

となると、ESGスコアの構成要素は時代によって変化していくことになると考えられます。経営学的な視点で言うとPEST分析の4要素からの変化を受ける、と思うのです。

例えば、政治や社会がゼロカーボンを過去のものとして扱うのであれば、情報として出すのが誤解を招くかもしれませんし、調査をすると足が出てしまうかもしれません。経済という観点からゼロカーボンが割に合わないものだと主張されるかもしれません。技術という観点からゼロカーボンよりも環境に配慮した観点の活動を企業が経済的に行うことができる未来が来るかもしれません。

 

その時にESGスコアはどのように変化していくべきでしょうか?

 

やり用としては二つ考えられます。
1)社会情報が変化しても既存の取得情報を取得し続ける
2)社会情報の変化に合わせて採用するESG構成要素を入れ替える

二案なのでメリットとデメリットは裏返しになります。経済性と継続性です。

すなわち、1)は情報が継続しているけれどESGスコアをつくる側・情報提供側(企業)としては負担が大きい、2)は世論の要請に合わせた過不足のない情報を提供できる可能性が高いが、情報の経過が断絶される恐れがある。

2)は、利用者の要請を鑑みて入れ替えを行うのですから、情報が断絶されてもいい、致し方ないという話は通るでしょうが、利用する人がいるかもしれない事を考えるとそちらを切り捨てるのもどうかな?と。

ESGスコア算出を継続的に行える限りは、情報量が多いに越したことはないと思われます。

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ここまでで「ESGスコアの利用者」と抽象的な言葉で語ってはきましたが、では、具体的にどのような方が「ESGスコアの利用者」なのかを次に考えたいと思います。

 

正直コレというものはありませんが、「インデックス投資のみをしている方ではない」とは言えると思います。

インデックス投資は主にTOPIXやS&P500という株価時価加重平均に沿った高度に分散された指標に準じて投資を行う投資方法です。そこに「ESG」という観点はなく、流行のテーマもありません。市場全体に投資するというのがコンセプトの投資方法です。

だから、それ以外、例えばESGをテーマにした投資信託を運営している方の材料にしていただくとか、個別株に投資している方の投資判断材料にしていただくという使われ方になるかと思います。そのような方のアクティブな投資によってインデックスが決まり、インデックス投資家はそれに後の利するような関係が成り立っていると理解しています。

(もっと進めば、ESGスコアが社会的信用を得られるかもしれません。そうなると利害関係者は多く複雑になるでしょう。例えばある地方都市がA社とB社の工場誘致で迷っており、その判断材料にESGスコアを利用するという事も考えられます。が、遠い話だと思われますので割愛。社会的信用なんてそんな簡単に作れるものじゃありません)

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では、アクティブに個別株を選別し売買する投資家に対してESGスコアは何を提供すればいいのか?

 

まずは、利害関係のない第三者性です。その点は会計監査における監査法人のそれと似ているかもしれません。

さらには、観点の選別論拠の説明です。例えばSという観点で「雇用」という観点を数値化するというのであれば、その観点を数値化しようとした意義を説明すべきです。冒頭のように、ESGスコアは、構成要素の数値をそれぞれ算出したものを成果物として提出し、重みづけをした後の総合的な判断は利用者が行うという使われ方を想定しています。総合的な判断を行う際にその説明は必要不可欠だと考えます。

最後に、数値評価する際の計算方法の説明です。例えばSという観点で「雇用」という観点を数値化したのであれば、何をどうしたら何点になるのかを説明しなければならないと考えます。総合的な判断を行う際にその説明は必要不可欠だと考えるからです。

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というわけで、

・ESGスコアも外部環境の変化に対応しなければならない

・第三者的な客観性が必要

・それぞれの観点の選定意義の説明が必要

・それぞれの観点における算出数値の説明が必要

という話でした。

 

ここまでやれば、ある程度利用者が広くなったとしても対応できるのではないかと考えます。

 

ではでは。

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